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▼ From Y to Y



『正臣...行っちゃうんだね』

「あぁ、悪ぃ。でも俺が行かなきゃ、ダメなんだ。過去は寂しがり屋らしいからよ。俺が追ってアイツともけり付けなきゃいけねぇんだ...。」

『そっか...』

「追いついたら、また戻ってくっからよ。だから、待っててくれ」

『....正臣....』

「?」

『沙樹ちゃんと幸せにね?』


そう言って、君は俺に背中を向けて歩き出した。
突然の言葉に言い返せず、ただただ揺れる心の中、子供のように叫び続けた。


―行くなよ...行かないでくれよ


♂♀


背中を向けて私は歩き出した。


『....涙なんか見せられない。涙落ちる前に行かなきゃ。幸せすぎるのは嫌いなんだよバーカ...』


そう偽った。
強がって手放した、理想の未来。
取り戻せない願い。


『はぁ...』


♂♀


『ただいまーって誰も居ないか....』


こんなに狭いワンルームなのに、少し広く感じる.....。
心の隙間を広げるように感じる。

壁にかかった時計と睨めっこ。
ほんの一分一秒が長く感じる。
この時間も君と過ごせたらと....。

そんな事を想うだけでも、あの子の顔が浮かんできて正臣と幸せそうにしている姿が見に映る。
こんな風に思うことさえ、許されない世界なの、かな?

♂♀


また、こっちの世界に戻ってこようなんて...
無理なのか?
こんな事を願うことすら、許されねぇ世界なのか?


「っ...畜生....こんなの、俺らしくねぇっ...!」


あの出来事を守りたいがためにつく嘘。
そんな、たった一つの嘘でさえも...君の涙を生んでしまう。

俺は、数えきれないほどの罪を重ねてきた...。
君の隣で、君のその手に触れたことでこっちの世界でそっと生きようとしたのかも、な。


♂♀


今、この瞬間を一つ拾う度、正臣との思い出を一つづつ捨てていくような有限の記憶と時間の中。
正臣の記憶にそっと居座っただけの私の存在など...きっと君の記憶から...消える?


『もう、戻れないのかな...?』

― ― ― ― ― ― ― ―

「もう、あそこには戻れねぇのかな...?」

― ― ― ― ― ― ― ―


『これって、終わりなの?始まりなの?』

そんなことをいつもより広く感じるベットに寝そべり、ぼやく。


夜は、まだまだ明けない。


『今日も一人であの夢を見る...のか...』


正臣の事を忘れないように、君の記憶を辿る夢を。


私は、数えきれないほどの罪を重ねてきた。
正臣の、その手に触れたことで、君の隣でそっと生きようとしたのかも。

孤独という名の罪で償うから。
君の記憶に、そっと...居させて。


♂♀


とりあえず、俺がまず追うのはアイツの事と過去だ。
そのことが終わっても、変わらない気持ちでまた出会えたらいいな。
そして、またみんなで笑い合おう。
その時まで―――

「『またね』」

End.


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