池袋の日常 | ナノ


▼ 「ありがとう」の言葉の裏に



君は知らない...私の本当の想いを。




「よっ、No!」

『やっほー、正臣。今日もかっこいいね相変わらず』

「Noも可愛いぞ、俺と一緒で相変わらずな!」


普段と同じように、正臣と挨拶を交わす。
けれど、何かが心の奥で引っ掛かり、私の心をもやもやとさせる。

正臣と過ごしてる時間は、すごく楽しいし、もっと居たいと思うし、何より“つまらない”と思ったことがない。

でも、最近は違う。
話してると、何故か会話が弾まないし、ぎくしゃくした感じになってしまう。

そうなりだしたのは、正臣が私を含め、帝人や杏里たちと一緒に帰らなくなった時から――



『正臣、今日こそ一緒に帰れる?』

そうやって私が聞くと、一瞬だけ辛そうな顔を見せ、またいつもの笑顔に戻る。
こういう時は、大抵は正臣とは帰れない日だ。

「ごめんなー、また今日も野暮用が入っちまっててさ。俺もホントは、Noと毎日でも帰りたいぜ?」

ほら、今日だって...。

『.....そっか。じゃあ、また明日ね。』

「おう、また明日な」

ニカっと笑って、足早に教室を出てく正臣の背中を見つめながら、自分も帰ることにした。



―来良総合病院―


正臣が運ばれてくるのを柱の陰からただ単に見つめるだけの私。
本当は今すぐにでも駆け寄りたい。
声をかけたい。
喋りたい。
でも、そんなことしたら駄目なのはわかってる。
きっと今行ったら自分が傷つくだけ。みんなの前で泣いてしまう。
それが嫌だ。


何故、こんな事になっているのかと言うと、ブルースクウェアと黄巾賊間での抗争があったらしい。
その最中に、正臣が怪我をしたらしい。

私は、その連絡を狩沢さんから受け取り、今に至るというわけだ。



―正臣の病室―


規則正しい寝息を立てて、寝ている正臣。


『はぁ...。仕方ないこと、なんだよね...さよならなんて言いたくないな。...ぅう..まさ、おみ...正臣、大好き...だよ。ずっとずっとあった時から今も...ね。』


正臣を起こさないよう、誰にも聞こえないようベッドの隣にしゃがみ、小さく呟く。
だんだんと目頭が熱くなって、暖かいものが頬を伝った。


『...それじゃ、さよなら...愛してるよ、正臣』


このまま泣いてたらいけないと思い、その場を去ることにした。


「待てよ...。」


―えっ...?


『まさ、おみ?』

「勝手に...行くんじゃ...っねぇよ...」


―話しかけないでよ


「さよならなんて...言うんじゃっねえよ...」


―やめてよ、私に構うのなんて


「ぜってぇ...戻ってくっから...さよならなんて...言うなよ」


―もう私は関わっちゃいけないんだよ


「だから...今だけは...笑えよ」


正臣の言葉で私の中の何かが音を立てて壊れだした。
正臣の言葉で涙の歯止めが効かなくなって顔が歪んでいく。

笑う?こんな顔で?
無理に決まってる。


「笑って...こっち向けよ...」


正臣に会えて私、幸せだったよ。
でもね、正臣にはやっぱり沙樹ちゃんじゃなきゃ。
運命って酷いよね。
でも最後に言わせて―――

『ありがとう、正臣』



―池袋某所―


『ありがとう、正臣』

それだけ伝えて病院から出た。
いや違う、走って逃げた。
逃げて逃げて着いた此処は...何処?
そんなのどうでもいいや。

壊れた音は私の人生。
流れた涙はいまだ不明。


最後まで正臣に迷惑かけちゃった。
ごめんね、それとありがとう。
何時までも沙樹ちゃんと仲良くね。
正臣の居場所は、そこにあるんだから。
もう逃げちゃ駄目だよ。

大好き。

こう伝えたかった、誰にも届かない私の想い。
その想いは誰にも知れず池袋の街に溶け込むことだろう。

End.


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