池袋の日常 | ナノ


▼ 帰り道に

―池袋 60階通り近くの路地 21時



「ふー。買った買った!」


アニメイト帰りのNo。
袋一つだが、かなりのグッズやら本やらが入ってる。


「またお金ためなきゃだな...」


苦笑しつつ独り言をつぶやくNoに前から男の集団が近づく。
人数は5,6人。


「ねぇ君。こんな時間に何してるの?」

『え・・・あの・・どちら様、ですか?』

「暇ならさ、お兄さんたちと遊ばない?」

『いや・・今から帰るので・・・。』

「えーいいじゃん。こんな時間まで買い物してるってことは...そう言う意味、なんでしょ?」


最初にNoに話しかけてきた男の後ろから、もう一人が口を出す。
と、同時に後ろに肩を引かれた。


『ひゃっ!やめてくださいっ!』

「なら、俺らと遊ぼうよ?ね」


いつの間にか後ろに回っていた他の男たちが、Noの方をがっしりと掴む。



『そんなことしてる暇ないんで!!』


男たちの隙をつき急いで逃げるNo。


『誰かっ・・・!電話しなきゃっ・・・』


走りつつ、バッグに手を突っ込み携帯を探り出す。


『正臣っ!正臣に電話・・・正臣正臣正臣・・・助けて正臣・・・っ!』


友人の名前を繰り返しながら震える手で電話を掛けるNo。


【もしもし?No?どうしたの?俺に会いたいとk「正臣っ!助けてっ」】


正臣の声が聞こえた途端、息を切らして助けを求めるNo。


【っ!?Noっ!どうしたっ!?】

『正臣助けてっ・・・お願いっ』

【今そっちに行く、何処にいる?】

『60階通り近くの路地っ、集団に絡まれた・・・っ!』

【わかった、待ってろ】


―プツ


電話を切り、息を整える。


『はぁ・・さすがにここまでは来ないでしょ・・・?』


足を止めあたりを見回す。


「追いかけっこは終わりだよ?何逃げてくれてんの」

『っ!ヤダヤダヤダ!止めてくださいっ!』

「探すの大変だったんだからさぁ、これくらいしてもらわないと」


下卑た笑みを浮かべながら、Noに迫る男たち。


―トンッ


Noの背中に冷たい感覚が伝わってくる。
振り返ると、案の定壁があった。


「ほら、もう逃げれないからさ、俺らと遊ぼう?」

『やだっ・・・・来ないで・・・正臣っ・・・』


―ドスッ


鈍い音がその場に響いた。

その音に、吃驚したNoは耳を塞ぎしゃがみ込む。
男たちが、音のした方を見ると少し背の高めの少年と、その足元に倒れてる仲間がいた。


「あ゛ぁ?誰だ手前ぇ?」

「今、忙しいの見てわかります―?」

「Noに、近寄んじゃねぇ・・・」


男たちの声も聞かず、苛立ちを見せる少年。


「ちょっとちょっとー!なぁーにしてくれちゃってんすかぁ?」


倒れた仲間を横目にやりつつ、1人の男が少年に近づく。


―ガスッ


鈍い音が再び響いた。


「お、お前ら・・・1人だろ!?何やってんだよっ」


仲間を2人も倒され、流石に焦りを見せる集団のリーダー的人間。


「てめぇ、舐めてんのか!!」

集団の中の一人が少年に殴り掛かったのを合図に、一斉に襲い掛かる。



が、少年は襲ってくる集団を呆気なく片付けた。


「ち、畜生っ・・・!!」


集団のリーダーがどこか古いセリフを吐き、残った仲間と一目散にその場を後にした。


『正臣っ・・・・助けて、正臣・・』


未だに正臣の名を繰り返しながら、助けを求めているNo。


「No、もう大丈夫だから、泣き止めって・・・」


少年――紀田正臣は、彼女に優しく声をかけ自分の胸元に抱き寄せる。


『っ!正臣っ・・・・助けてくれて・・あり、がと・・・ヒック・・』

「Noの為なら、この、紀田正臣は何だってするっつーの」

『うん・・!ありがと、正臣・・・大好きだよ』

「あぁ・・俺もNoのこと好きだぜ・・・。」


池袋の街中で、抱き合う少年少女。
このとき、少女は少年に恋をした。
だが、その恋は儚く終わる。

少年の思いを知った少女の話はまた別の話。

End.


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