巡り会いてV | ナノ

「おはようございます、奈良婦人。シカマルはいらっしゃるかしら」
「あらあら、おはようございます、アリス様。シカマルなら縁側で主人と将棋を指していますよ」

日が十二分に昇った午前中、アリスはシカマルの家を訪れていた。
ヨシノに案内されて縁側へ行けばシカマルが悔しそうに頭をガシガシと掻いているのが目に入る。どうやら丁度シカクの勝ちで対局が終わったらしい。

「くそ、また負けた・・・」
「まだまだ詰めが甘いな。
 っと、アリス様。おはようございます」

近くまで来たアリスに気が付いて挨拶をしたシカクにシカマルも「よっ」と手を上げる。

「おはよう。終わったようね」
「まぁな・・・アリスも一局どうだ?」
「おぉ、そうしろそうしろ。アリス様、俺は今から綱手様に用事があるのでこれで」
「は?親父今日は休みだって「じゃ、しっかりやれよシカマル」はあ?」

怪訝な表情のシカマルを置いてシカクはひらひらと手を振って去っていった。暫くぼうっとそれを見つめた後アリスと顔を見合わせる。

「なんだったんだ・・・?」
「さぁ・・・奈良婦人も買い物に行くと出てしまったし、何だか気を遣わせてしまったかしら」
「・・・おいおいマジかよ。余計なお世話だっての」

ポツリと呟いた言葉にアリスが首を傾げたがシカマルは気にするなと言って向かいに座るよう促した。駒を並べて指し始めて、そして中盤に差し掛かった頃、シカマルが「そういえば」と切り出す。

「何か話があって来たんじゃないのか?」
「あぁ、そうそう。ペインの事で進展があったか気になってね」
「あー・・・」

次の手を考えながら顔を顰めるシカマル。どうやらあまり成果が出ていないらしい。

「実際に見てねーからな・・・アリスとフカサク様の情報だけじゃ真相に辿り着くのは難しい」
「ま、そうよね。実際に戦ったわたくしでも分からないんだもの・・・人づての情報しかないのでは余計に、かしら」

パチン、パチン、と音を鳴らしながら勝負が進むのと同時にペインについての話も進めていく。本当に分からないことだらけだ。それにペインと行動を共にする小南もあの程度で亡くなったとは考えられない。そちらの攻略も考えておかなければ足元をすくわれるだろう。

「他に何かねーのか?どんなに小さい事でもいい。ペインの正体を暴くには少しでも多くの情報が必要だ」
「と、いってもね・・・。うーん・・・まぁ役に立つかは分からないけれど、わたくしが戦ったペイン六道とやらは全員黒い棒を顔に挿しているのを見たわ。あと髪の色と輪廻眼。共通点と言えばそれくらいかしらね」
「黒い棒か・・・気になるのはそれだな」
「でしょう?シズネ嬢が調べているから報告を待つしかないわね。
 ──はい、王手」

パチン、と音を鳴らしてアリスが玉の隣に駒を置く。シカマルは詰まったような声を出すと両手を上げて息を吐いた。

「まいった。俺の負けだ」
「シカクとの対局を引きずったわね。まぁわたくしは三連敗を防げたから良いけれど」

小さく笑って駒と将棋盤を片付ける頃には時計の短い針が十二にさしかかっていた。もうそろそろ帰らなくてはとシカマルに告げて腰を上げるが、廊下へ出たところで玄関の方からドアが開く音が聞こえてくる。「ただいま」という声はヨシノのものだった。

「あらアリス様。今からお昼を作るので是非食べていってくださいね」
「あ、いえ、お構いなく。帰ってから作っても十分間に合うから「遠慮はいりませんよ!ほら、シカマル、手伝いなさい」な、奈良婦人・・・」
「ったく面倒くせぇ。あー・・・アリス、時間あるなら食べてけ」

機嫌よく台所に消えていったヨシノにため息を吐いたシカマルがアリスに目を向けて言う。どうしようか少し悩んだが、ヨシノのあの様子から断るのもどうかと思い一つ頷くと来た廊下を戻っていった。




「ごめんなさいね、せっかくアリス様がいらっしゃったのに大したおもてなしも出来なくて・・・」
「わたくしが急に押しかけたのだからお気になさらないで」

しばらくして出来上がった食事を机に並べながら申し訳なさそうに言うヨシノにアリスはとんでもないと手を振る。三人で席について手を合わせて、そして箸を口に運んだアリスは顔を綻ばせた。

「美味しいわ。やはり母親が作った料理って、自分が作ったものやお店で出てくるものとは違うわね」
「あらあら、お褒めに与り光栄です。息子も主人もそういう事は言ってくれないから嬉しいわ」
「んなこと毎回言ってられるかよ・・・。
 そんなに違うもんか?いや、そりゃ使ってる食材が違うから味は全然違うだろうけど」
「そういう意味ではなくってよ。家庭料理の方が温かみがあるというか・・・着飾ってないという感じかしら。食べるためにある食事という印象ね」
「お前らしい感想だな」

そうして話しながら食事をして食後のお茶もして、二時間ほど経ったところでイタチの点滴注射のバッグがもうすぐ空になることに気付いた。
そろそろ帰らなければ。
玄関まで見送りに来てくれた奈良親子に頭を下げて、アリスは少し早歩きで自宅へ戻っていった。


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