「アリスが消えただと?」 暁のアジトにて、全員が集められた部屋でイタチと鬼鮫が報告をしていた。その内容にリーダーであるペインが眉を顰める。 「どういうことだ。アイツの足ではそう遠くまで行くことはできないだろう」 「デイダラの鳥を降りた後、村の茶屋に金蘭を置いて大蛇丸のアジトへ様子見に行ったのですがね・・・」 「戻ったらこれが置いてあった」 イタチが全員に見えるよう暁の装束と笠、それから“油断大敵 ─アリス─”のメモを出した。 逸早くその意図に気付いたメンバーの中で小南が小さく息を吐く。 「つまりアリスは私達の隙を突くために記憶のないふりをしていたということだな」 「恐らく姿が大きくなったときに戻ったんだろう」 「チッ、小賢しい・・・。だからさっさと殺せばよかったんだよ」 「旦那、それ自分のコレクションに加えるためだろ、うん。っつーか逃がすとか何やってんだよイタチ!」 「見抜けなかったお前には言われたくないな」 「んだとコラ!」 「やめろデイダラ。イタチの言うとおりアリスの記憶が戻っていることに気付けなかった我々にも責任がある」 頭に血が上ったデイダラを諌めるペイン。そして彼はメンバーを見渡した。 「今回のことは仕方がない。あまりアイツばかりに時間を取られるわけにはいかないからな。今後は各自発見次第捕獲ということにする」 「しゃーねぇなァ」 「間違って殺しても文句を言うなよ」 「角都さん、それ既に殺す気満々じゃないですか!怖いなーもう!」 いつも通りのテンションで喋るトビに面倒くさそうな視線を送る角都。ペインがトビの様子をうかがっていたようだが、何も読み取ることは出来なかった。 報告が終わって解散宣言が出される。アリスがいなくなったことで再び忙しくなりそうな日常に息を吐いたメンバー達。 主に賞金首を狩るために各地を回ることになりそうだ。アリスがいたことで任務による収入がなかった+彼女が遠慮なしに色々と使ってくれたから。 部屋に戻ったイタチは椅子に座ってアリスに貰った鏡を眺める。いつ見ても綺麗な鏡だ。 「随分と気に入っているようだな」 「 、・・・」 かけられた声にピクリと体が反応した。目を向ければ腕を組んだトビがドアに体重を預けて此方を見ている。 「・・・ノックくらいしろ」 「そう怒るな。少し気になることがあってな」 自然と雰囲気が緊張してきた。絶対に碌なことではないと軽く眉を顰めるイタチ。 「アイツの記憶が戻っていたことに、本当に気付かなかったのか?」 「何が言いたい」 「あまりにも上手くいきすぎていると思ってな。それに本来ならばお前が監視対象を逃すとは考えられない。となると、アイツの実力が俺達の想定以上だったか、若しくは・・・お前が手引きをしたか、だ」 面の奥の瞳が鈍く光る。イタチは小さく息を吐いて彼を見据えた。 「もし俺が手引きをすれば、アリスがあの一夜の事件に疑問を持つのは確実だろう。そうなっては困る」 「つまり自分は関係ないということか。・・・ま、そういうことにしておこう。どの道首輪は付けてあるから問題ない」 引っかかる単語が出てきたが、その疑問を問う前にトビは部屋から出て行った。確認しようにも本人がいなくてはどうにもならない。 「・・・」 イタチは手元の鏡に目を落とした。 木ノ葉と、それとサスケだけは絶対に守らなければ。 鏡に映る己の姿がさざ波のように揺れた。
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