さてはて元の年齢に戻ったアリスであるが、生活は今までとあまり変わらない毎日を過ごしていた。 「アリスちゃーん!あーそびーま 「他を当たりなさい」 せめて最後まで言わせて!」 振り向きもせずにさっさと切り捨てる。 最近では魔法書と鬼鮫のお茶が標準装備になりつつあるアリス。 他にやることがないからかもしれないが、一日の大半が読書という運動不足まっしぐらの生活を送っていた。 そんなある日のこと─── 「───お兄様」 何かを手に持っているアリスがイタチに歩み寄る。 スッと差し出したそれは、宝石と金で品良く装飾された手のひらサイズの鏡だった。 イタチは鏡を見てからアリスに疑問の表情を向ける。 「わたくしからの贈り物です」 「鏡、か」 「こういったものはお好きではありませんでしたか?」 好き・嫌いではなく、男に鏡を贈るとは珍しい。まぁ彼女のことだからその方面は仕方ないのかもしれない。 そう思い、礼を言ってそれを受け取るイタチ。 「それで、その、この宝石はお守りとして持ち歩く人が多いと聞きますので、常に身に着けていただけたら・・・」 控えめに言う彼女にメンバー達は意外だとでも言いたげな表情になった。 今の性格に見合わない、随分と女の子らしい考えを持っている。 「アリスはそういう不確実なことは信じないと思っていたけど、そうでもないのね」 「嫌いではないわ。あるのとないのでは心の持ち方が変わってくるもの。そこから結果が変わってくるかもしれないわ。・・・お兄様、いかがでしょう」 「・・・あぁ、この程度の大きさなら問題ない」 家族愛からだとしても、好いている相手からの贈り物は嬉しいものだ。 きっと自分は最期までこれを手放すことはないだろう。 ───鏡に映る己が、そっと目を瞑った。
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