巡り会いてU | ナノ

サソリに毒を盛られてからというもの、アリスの体調には大きく波があった。

酷い時には一日中ベッドから離れられず、比較的良い日には───


「鬼鮫、お茶を入れていただけて?」

「ご自分でどう 「早く」 ・・・はいはい」


───お茶を飲む余裕がある。

しかし変化はこれに留まらなかった。


「なんかアリスの奴機嫌悪くねぇか?」

「オイラもそう思う、うん」

「やっぱりサソリのせいじゃない?」
「毒盛ッタカラナ」


そう、最近の彼女はどことなく機嫌が悪くみえる。

別に目くじらを立てて怒るわけでもないし手や足が出るわけでもない。

だが終始肌寒い雰囲気を纏い、話し方にも多少の威圧感があった。

・・・だからと言ってここに居る者達が怯えるわけがないが。

少なくとも呆れた様子でお茶を入れたり、彼女の機嫌がどうのと呑気に話すだけの余裕はある。


「アリスちゃん!なんでそん 「口を開かないで」 えぇー!良いじゃないッスか!これでも心配してるんですよ!?」

「そう、それはありがとう。貴方がわたくしの視界から消えたなら少しは落ち着くと思うのだけれど、ご検討願えるかしら」

「それって暗にここから出て行けって言ってます!?」

「いいえ、死んでと言っているわ」


ニッコリと微笑んで言った(目は据わっていた)アリスにトビが「酷い!」と顔を覆った。

それを見た彼女の双眸は(顔は笑っているが)氷点下に達している。

それを見ていた角都が珍しく口を開いた。


「・・・何かあったのか?」

「わたくしが聞きたいわよ。いつも通り・・・とはいかないけれど、毒で体調を崩しているくらいでこんなにピリピリするなんて」

「大方神経に作用する成分でもあったんだろう」


眉を寄せて溜め息を吐くアリスにイタチが尤もな答えを出す。

だが恐らく原因はそれだけではない。


「(もうとっくに解毒されていてもいい頃なのに・・・)」


解毒薬がなくても自分の治癒力なら自然と回復に向かうはずだ。

なのに数日経ってもまだ寝込むこともあるなど完全に予想外で。

薬を作ろうにも、まずは毒の成分表がなければ不可能だろう。


「・・・やはり部屋に戻るわ。なんだか頭が痛くなってきたから」


マイナスなことを考えていたせいか急に体調が崩れ始めた。

席を立って歩き出す頃には、ぐわんぐわんと鐘が鳴り響くような痛みで視界すらも揺れて来る。


「っ、」


その直後、脳みそをギリ、と締め付けられるような激痛に襲われて、意識が暗転した。


「アリス!?」


驚いたように声を上げた小南が、傾く彼女を紙ですくい上げる。

次の瞬間、


アリスの身体がシュルリと薄い煙に包まれた。


「今度は何だよ、うん!?」


警戒するように張りつめる空気の中、晴れた視界の先にいたのは・・・


「・・・は?アリス?ちっちゃくね??」


ぶかぶかのドレスを纏った愛らしい寝顔の幼子。

飛段の間抜けな呟きが、宙に吸い込まれて消えていった。


──────────
────────
──────

「子ども、だな・・・うん」

「子どもですねー」

「七つ八つ辺り、といったところか」

「小さいな・・・」


取り合えずアリスに用意した部屋までやって来た一行。

ベッドに寝かせてその様子を確認する。


「この子供が金蘭だというのは分かりますが・・・何故いきなりこんな姿に」

「それはやっぱり」
「サソリノ毒ダロ」

「まぁそれしか考えられねぇな」

「記憶まで退化していたら面倒だ。ガキは煩い」


軽く溜め息を吐く角都。

彼と同じ心境の者がいる一方で、実に興味深いといった様子でアリスを観察したり触ったりしている者もいた。


「ほっぺ柔らけー」

「おい、今動いたぜェ!」

「そりゃ生きてるんだから動くでしょう!それよりもこの髪の毛見てください!足首までありますよ。どうやったらこんなに早く伸びるんでしょうかねー?」

「ちょっと貴方達やめなさい。そんなに騒いだら起きちゃうじゃない」


大人しくイタチやペインと共に観察していた小南が眉を顰めて咎める。


「そう言うなってェ!」

「寧ろ早く起きてほしいッス!もし記憶がないなら暁メンバーとして育てましょうよ!小さいうちなら素直に言うこと聞いてくれるでしょうし、ね」


トビがそう言ってチラリとペインに目をやる。

彼は周りに気付かれないように小さく頷いた。

───というやり取りをしていたところ、相変わらず騒いでいた三人のせいで意識が戻ったのか、アリスは不快そうに眉を顰めて薄く瞳を開く。

瞬間、彼女の目の前にいた人物──顔を覗き込んでいたデイダラ──の首辺りを水晶の刃が掠めた。


「・・・危ねぇな、うん」


至近距離からの攻撃をギリギリで避けた彼は、体を起こしてこちらを睨む少女に視線を戻す。

仔猫の威嚇を連想させる幼い彼女はしかし、可愛らしい容姿とは裏腹に冷たさを感じさせる金の双眸で、その年齢には合わない肌寒い雰囲気を出していた。

光の転がる大きな瞳で一同を見渡した少女が唇を小さく動かす。


「───Who are you?」

「「「・・・・・・・・」」」


異国の言葉を聞き取り理解できる者は、当然のことながらいなかった。




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