静かに、意識が浮上した。すぐに状況を把握して目を瞑ったまま自分の状態を確認する。 「(まず肋骨がかなり治ってきていることから、恐らくあれから数日が経っている。次にチャクラは使用不可。魔力は問題なし。最後に両足首に違和感・・・)」 そっと目を開くと薄暗い洞窟のような場所で。辺りが見渡せる角度に頭を動かせば視界に入るのは質の悪いベッドと鉄格子。 それ以外は何もない。 「(牢、ね・・・大蛇丸の所より扱いが悪いわ)」 小さく溜め息を吐いて、気になっていた足をずらすとジャリ、と金属が擦れる音がした。 「(・・・まさか、鎖で繋がれている?)」 眉を顰めて視線を下げるも身体に遮られて見ることは叶わない。 「(ただの鎖ならば、どうとでもなるわね)」 普通の忍であれば、チャクラを封じられて拘束されているともなれば酷く焦る状況なのだろうが、生憎彼女にはチャクラよりも使い慣れている魔力がある。 逃げようと思えばいつでも逃げられのだ。尤も、そんな敵の警戒を煽るようなバカなことはしないが。 「(・・・暁は何をやっているのかしら。見張りも付いてないし・・・まさかずっとここに放置なんてことないわよね)」 そんなことを考えていると不意に「目が覚めたか」と声を掛けられた。頭を傾ければいつの間にか鉄格子の向こう側に立っていたイタチが目に入る。 「良く寝ていたな。ここに来てから四日経っているぞ」 「そう・・・」 「・・・怪我の具合はどうだ」 「肋骨折った相手に言う言葉じゃないわね」 「答えろ」 「骨折が数日やそこらで治るとでも?」 「目に見える傷は全て治っていた」 イタチの言葉にアリスは眉を顰めた。特に隠しているわけではないが、敵に知られるのは何処となく不快である。 「それともう一つ。・・・何故気付かなかった」 「どういう意味かしら」 「あの時は後をつけていた俺達の存在に気付いた。なのに今回は俺がここに立ったことに気付かなかった。それは何故だ」 全く厄介だ、とアリスは小さく溜め息を吐いた。 そんな些細なことを気にするとは。いや、だからこそ彼は忍として優秀なのかもしれない。 無言が続く中、ふとイタチが刀印を胸元まで持っていって集中し出した。 「──あぁ、起きた。 ・・・いや、無理だろう。・・・わかった──」 「仲間からの連絡かしら」 「あぁ。お前はまだ十分に動けなさそうだからな。ここに集まるらしい」 それを聞いたアリスは治りかけの肋骨に気を配りながらゆっくり身体を起こす。横になったままでも良かったのだが、何となくその状態を見下ろされるのは気に食わない。 ベッドの上に足を崩して座ればそれぞれの足に繋がっている鎖が見えた。 「お前がアリスか」 鎖の硬度を考えていたところに投げかけられた声。目を向ければイタチの隣にノイズのかかった男のシルエットがあった。 続くようにいくつかのシルエットが現れる。その光景にアリスが眉を顰めていると少し遠くから聞こえてくる二つ分の走る音。 「目ぇ覚ましたってホントかァ!?」 「やっとだな、うん!」 生身で登場したのは銀髪と金髪だった。 「遅いと思ったら・・・態々来たんですか」 「そりゃせっかくだからよォ」 「直接見てぇじゃねェか!ゲハハァ!」 「(一、二、三───八、九・・・) 全員集まるなんて、暁は中々暇なようね」 「そうでもない。今回は新しいメンバーのために集めただけのことだ」 「(ということは今の暁は全部で九人) それはご苦労様。ついでに自己紹介願えるかしら。わたくしを捕らえに来た四人、それから飛段と角都は知っているから・・・残りの三人は是非」 冷静に情報を集めるアリスにリーダー格の男が波紋を描く紫色の瞳を細める。 「へぇー・・・ホントきれいな面してんなァ」 「だから言ったろ?うん!」 「デイダラちゃんが言う可愛いとか当てになんねーし。ま、今回は大当たりだけどよぉ」 「なんだとコラ!それにちゃん付けやめろっての!」 「二人共静かにしろ」 睨み合いが続く中で交わされる会話に角都が制止をかける。静かになるのをを見計らって、ペインが口を開いた。 「・・・リーダーのペインだ。こいつが小南でそっちがゼツ」 リーダーことペインの紹介に今度はアリスが軽く目を細める。 「それで、わたくしはいつまでここに閉じ籠もっていなくてはならないのかしら」 「暁に協力しろ。そうすればすぐにでも出してやる」 「言っておくけれどここにいるのは任意よ。出ようと思えば出られるの。あまり手荒に扱っていては知らない間にいなくなっているかもしれなくてよ」 「・・・そんなに自分の力に自信があるなら今ここで出してみろ」 その言葉にアリスはやはりこうなるか、と顔を顰めた。 [ back ] |