創設期企画小説 | ナノ


私はその時“運命の人”なるものに出会った。


「おい、大丈夫か?」


不覚にも狩人の仕掛けた罠に掛かってしまった私を助けてくれた真っ黒な人。

ぺこりと人間じみた動作で頭を下げたからか、その人は私を“人間の言葉を理解できる狐”と判断したらしい。

手当てをしてくれている間、沢山の話をしてくれた。


今日は趣味の鷹狩をしに山に訪れたという事。

その人は木ノ葉隠れに住んでいるという事。

昔馴染みに馬鹿な友人がいるという事。


包帯をキュッと結んだその人は最後に思い出したように名乗って、立ち上がった。


「そう何度も助けが来るとは限らん」


長い髪、鋭い目、逞しい体つき、

そして──。


「気をつけろよ」


去って行く背に見えた団扇のマーク。



あれから木ノ葉隠れとやらに獣道を通ってやってきた私。

目的は勿論いつかの黒い人──うちはマダラだ。

しかしながらこの土地は広い広い・・・すぐに見つかると思っていたうちはマダラ捜索は難航した。

人間が生活する様子を眺めながら探して早数週間。

本当にこの地にあの人はいるのだろうか。

そう思い始めた時、チャンスが訪れた。


うちはマダラと同じ団扇のマークを背負った人を見つけたのだ。


話を盗み聞くに、どうやらその人はうちはマダラの家に行くらしい。

此れ幸いと付いて行って・・・そして、見つけた。


「また見合い話か。結婚などまだ良いだろう」

「しかしながらマダラ様、そろそろ其方も視野に入れて・・・女子の一人でも傍に置いてはいかがでしょうか・・・」

「いらん。女など面倒なだけだ」


ふむ、どうやらあの方は望まぬ婚姻を迫られているらしい。

此処は私の出番だ。あの人の妻になって、女避けになって差し上げましょう。

狐であれば面倒にはならないはず。


・・・人の姿に化けるのだから、うちはマダラの言う“女”と同じに分類されるのでは?なんて聞こえない。



今宵、貴方の元に参ります──


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