私はすごく美人なのだと思う。自分で自覚をしているほどに。だって去年も一昨年も、そして今年も、ミス銀魂高校に選ばれた。街を歩けばナンパやスカウトが雨あられ。友達は皆、羨ましがる、黄子ちゃんはいいなあって。
でも、私は生まれてこのかたこの顔で良かったという思い出がない。小学校の演劇発表会では、私はナレーターがやりたかったのに、勝手に推薦されてクラス投票でお姫様の役に決まった。
中学生になって、机や下駄箱の中に手紙が入っていると皆に冷やかされた。学年一かっこいい男の子を振ったとき、陰でひどく悪口を言われた。

本当はナンパもスカウトも嫌いだ。ゆっくり買い物がしたいのに、そんなこともできない。何もできない。



だから私は、山崎君に告白だってできない。





私の存在が、高校の中だけでなく近隣の高校にまで広まっているのを知ったのは私が山崎君に恋心を抱いたのと同時期。
私のことを事細かに書いたホームページを見つけた時は背筋がぞっとしたものだった。誕生日や血液型はもちろん、好きな食べ物や得意な教科まで書いてあったそれを私は二度と見られないだろう。そしてそのホームページの中の一つに、私の彼氏あてゲームというのがあったのだ。一体どんなイケメンなら彼氏になれるのか、なんていう前書きとともに、なりそうな男の名前を投票するというもの。

あろうことかほとんど知らない男子で、とりあえず私の意思とは関係なしに、もう一つの娯楽として確立されてしまっているのだと気がついた。

そして私の恋だってこのページを利用している人間にとっても娯楽となってしまうと分かった時、私はどうしたらいいのか分からなくなってしまったのだ。
もしも山崎君に告白したとして、答えがOKであったにしろなかったにしろ、きっと山崎君は注目の的となる。私のせいで迷惑をかけるのだ。そう思うと前にも後ろにも進めなくなってしまった。

山崎君が私のことを唯の友達としてしか見ていないのは知っていた。私がいま在籍しているクラスは、ひどくここちの良いところだった。皆いい人。私を見た目で判断しない人。