長編、企画 | ナノ

【番外】月島くんと山田くん



「おい、月島!どういうことだよ?!」
「何?いきなり何なの?」

跳子が男子バレー部のマネージャーになった話は瞬く間に学校中を駆け巡ったが、山田は未だに納得できないでいた。

「佐藤たちに聞いたぞ?お前が誘ったって話じゃんか!」

そういうことか、と月島はため息をつく。
余計な情報を与えてくれたものだ、と今は誰もいないちえの席に目を向けた。

「まぁそうだけど。それが何?」
「俺がサッカー部に誘ってるの知ってただろ!!」

あぁもうホント、面倒くさい。
知ってたからなんだというのか、とも思うが、こういう無駄に熱いヤツにこれ以上からまれたくはない。

「…僕的には君のためっていうのもあったんだけど。」
「は?どういうことだよ??」
「君さ、サッカー部でレギュラーなわけじゃないでしょ?」
「うっ。ま、まぁな。」

山田の顔が一瞬ひるんだ。

「高校1年の女子なんてさ、結局試合で格好いいとことか見たら、簡単にレギュラーの先輩を好きになっちゃったりするんじゃない?」
「…!」
「自分の部活の先輩に取られたら、それこそ最悪でしょ?」
「お、おぉ。」
「だったら余計な先輩の目にさらさずに、君はクラスメイトとしていいとこ見せた方がいいと思うんダケド。」
「そ、そうか…。それもそうだな!」

山田は月島に詰め寄っていた手を離し、一転して晴れやかな顔になった。

「じゃあ僕もう部活行くから。」
「おぅ、わりぃな!」

月島は体制を整え、そのまま部活に向かおうと廊下に出ると山口がすぐに追ってきた。

二人で並んで廊下を歩く。

「…ねぇツッキー。」
「…何。」
「さっきの山田との話、なんだけどさ。」

−あの理屈で行くと、山田にとってただ単にサッカー部じゃないってだけで、違う部のレギュラーの先輩に鈴木さんをとられるってことになるんじゃないの?−

山口の言葉に月島はチラリと視線を向けた。

「うるさいよ、山口。」
「ごめん!ツッキー。」
「…まぁ普通気付くよね。面倒だから黙っててよ。」

さすがツッキー!と山口は言うが、さすが、というならむしろ山田の方だと月島は思う。
あんなにうまく言いくるめられるとは思わなかった。


二人が階段を下りた少し先に、行先は同じであろう跳子の後ろ姿が目に入った。
レギュラーの先輩にとられる、か。

「…まぁ簡単にそんなことにはさせないケド。」
「?ツッキー何か言った?」
「なんでもないよ。」


急ぎ足で部活に向かう彼女の背中に追いつくため、二人は大きく足を踏み出した。


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