長編、企画 | ナノ

1年4組の日常の変化



『私、男子バレーボール部のマネージャーをすることになったの。』

翌日、入部届を片手にちえとゆかちゃんに報告をした。

「そう、男バレに。確か前は強かったのよね。」
「うちのクラスじゃ…月島と山口がそうだっけ?」
『そうだよ〜。昨日月島くんが声かけてくれたの。練習見せてもらったけど、今も結構強いと思うよ!』
「…よかったじゃん。跳子。」
『え?』
「なんか、すっきりした顔してるわよ。」

二人には特に何も話していなかったけど、そんなに解りやすかったのだろうか。
きっと心配かけてしまったんだろうな。

『うん…。二人ともありがとう。…またそのうち、話聞いてくれる?』

二人はもちろん!と笑ってくれた。
本当にいい友達に会えてよかった、と心から思える。

「それにしても男子バレー部かぁ。うちの学校の男子バレー部って…オイシイわよね。」
『ゆ、ゆかちゃん…?』
「澤村さん×スガさんとか…、月島あたりも先輩にやりこめられたりとかしてみたり…!」
『ゆかちゃん?!なんかよくわからないけど、戻ってきて!』
「ゆか…色々台無しよ…。」

ゆかちゃんは、たまにこんな風に壊れるけど。

『あっそうだ!昨日言ってたケーキ屋さんなんだけど…。』
「あぁ、私たちは部活がない日なら基本大丈夫だけど。」
「というかバレー部入ったら跳子の方が時間ないんじゃない?」
『それなんだけど、今週末の日曜日の夕方はどう?部活が早めに終わるみたいで。』
「OKよ〜。」
「私も!」
『それでね、月島くんと山口くんも一緒でもいい?ってもう誘い済みなんだけど。』

今は主のいない隣の席を無意識にチラリと見ながら聞いてみる。
二人は少し驚いた顔をしてたけど、快くOKしてくれた。

『じゃあお姉さんにも聞いてみるから、詳しい時間とかは後でLINEで…。』
「鈴木〜!!」

そろそろ部活に行くために話をしめようとしたら、今日も山田くんの声が聞こえてきた。

『あ、山田君…。』
「鈴木!今日こそはいい返事聞くまで帰さないぞ!」
『えぇっ?!』
「今日はこんなサッカーマンガ持ってきたんだ!観たことあるか?」

片手に何冊か本を持って、笑いかけてくれる山田くんに、そういえば部活に入ることをまだ言ってなかった。
あんなに熱心に誘ってくれたのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

『山田くん、わ、私…、』
「何してんの鈴木。ほらもう部活行くよ。」
『わっ!つ、きしまくん。』

いつの間に戻ってきたのか、振り向けば月島くんが席に荷物を取りにきていた。
山田くんがその月島くんの言葉に怪訝そうに眉をひそめる。

「?月島何言ってんの?部活って…。」
『鈴木は正式に男子バレー部のマネージャーになったんで。』
「はぁっ?!」
「…まだ入部届出してないけどね。」
「うるさいよ佐藤。鈴木、ほら早く。」

ちえのツッコミも華麗にスルーして、月島くんは私の手を引いた。
足がもつれそうになりながらも慌てて振り向き、ぽかんとしている山田くんに声をかける。

『ごめんね山田くん!そういうことで!サッカー頑張ってね!』


バタバタと教室を出ていく二人に、ちえとゆかは揃ってじゃぁね〜と見送った。
最後に山田を見てにやりと笑った月島は確信犯だろう。

固まったままの山田を余所に、彼が持ってきたマンガをパラパラめくる二人。

「まぁ人生そんなもんよ、少年。」
「経験値があがったね。あ、これ貸して。」
「〜っお前らなんて嫌いだぁ〜!!」


涙目になった山田の慟哭が教室に響き渡った。


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