長編、企画 | ナノ

プロローグ



気恥ずかしいし絶対にバカにされそうだから決して口にはしないけど、青城に入学してよかったなぁと思うことはよくあって。
まぁ北一に入学した時点で青城に行くということはもう自分の中で確定していたし、他の学校に行ったことないだろって言われりゃそうなんだけど。

つまりはそれだけ高校生活が充実してるって事だ。

そりゃ及川さん的にはコレだけモテちゃうし、バレーに専念してたって学業だって疎かにしたことないし、そもそも何でもできちゃうから嫌でも充実しちゃうんだけどさ。


朝練終わりのロッカーの前で、口に出さずにそんな事を思っていれば、突然頭に衝撃が走る。

「アダッ!何するの岩ちゃん!」
「…なんかムカツク顔してたんだよ。」
「ヒドイな!!」

人の頭を殴っておいて、そのまま着替えを続行する岩ちゃんにジトッとした視線を送るが、結局何の反応も見られない。
きっと気にもされてないんだろう。

バカ力なんだから、毎度毎度力加減を考えて欲しいよね全く。
というか、ちょっとまだ脳が揺れてる気がするんだけど…。

俺は殴られた箇所を一度だけ擦ってから諦めるようにはぁとため息をついて、汗で濡れたTシャツを脱いだ。

(何を考えていたんだっけ…?あぁそうだ、高校生活だ。)

貼り付くようなTシャツから解放されると、なんだか鼻がムズムズしてきた。
くしゃみが出そうで出なくて、ズズッと鼻をすすってやり過ごす。
花粉症ではないはずだから、ちょっと体が冷えてしまったのかもしれない。
暦の上では春とは言っても、まだまだ花冷えする季節だ。

そう、もう3年になった。
あと残り一年となったココでやり残した事と言ったら、大きく二つ。

第一にはもちろん、牛若ちゃんをこてんぱんにのして今のメンバーで全国大会に出場するということ。
打倒白鳥沢。
主将として皆をそこへ連れていく責務が、俺にはある。

そしてあともう一つは…

「お。跳子からLINEきてるわ。」
「何々なんて?及川さんのこと書いてあるっ?!っつかマッキーずるいっ!」
「…うぜー…。」

そう。
もう一つは、愛しの跳子ちゃんと彼氏彼女になることだ。


彼女の顔を思い出してちょっと機嫌を直せば、岩ちゃんが呆れるような視線を投げつけてきた。

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