長編、企画 | ナノ

マネージャーとして(side 澤村)



「だからもう一回、トスを呼んでくれ!エース!」
「俺がいればお前は最強だ!」


試合はスガ・旭・西谷の入った町内会チームの勝利で終わった。
大人たちにひとしきりからかわれ、赤くなりながらも手ごたえを感じた。

また、みんなでバレーができる。何よりもそれが嬉しくて全身が震えた。

「明日からみっちりやる」という鳥養コーチのしごき宣言の後、ミーティングの最後にみんなに鈴木を紹介することになった。
鈴木と二人で、みんなの前に立つ。

「新しくマネージャーとして入部することになった鈴木だ。入部届はまだだが、先に紹介しておくな。」
『1-4の鈴木跳子です。よろしくお願いします。』

また深々とお辞儀をし、ようやく顔をあげた鈴木には極上といえる笑顔が溢れていた。
その顔を見て全員が思わず息を飲んだのが見えた。
田中と西谷に至っては固まっている。
まぁ気持ちはわかるがな…。

とりあえずシメに円陣を組んで解散となった後、鈴木が声をかけてきた。

『すいません、澤村先輩。』
「ん?どした?」
『あと、武田先生と鳥養コーチ、清水先輩もよろしいでしょうか?』
「?」

とりあえず声をかけられた面々で集まると、鈴木は意を決したように話し始めた。

『お疲れのところすみません。一つ入部する前にお話ししておくことがあって。』


中学時代にもバレー部マネだった鈴木は、部活時や練習試合には通常のマネージャー業務をやっていたが、公式戦時のベンチ入りマネージャーの経験はなく、情報収集や分析のために次にあたる相手の試合を観ていたそうだ。
なので今後、烏野のマネとしてどういう立場でいるべきかの相談だった。

「…すげーな…!」
『来年以降のことも考えて、ベンチ入りの方がよければもちろんそうするつもりですが…。』
「いや、俺も音駒戦までの臨時だし、情報収集や分析ができるならそれに越したこたぁねぇんじゃねーか?」
「そうですね…。僕はそちらはさっぱり役に立てないので…。」
「じゃあとりあえずIHでは中学時と同じで頼む。」
『わかりました。清水先輩、すみませんがよろしくお願いいたします。』
「うん。わかった。よろしくね。」

ニコリと微笑み合うマネージャー同士に思わず「おぉ」と感嘆した。
そしてそのまま完全に解散となった。

「おーし、じゃあ帰るか。鈴木の家はどこだ?送ってくぞ。」
『…えっ?!いやいやその大丈夫です!近いので!』
「……(ニッコリ)」
『!!(ヒィッ!)あぁぁありがとうございますです!お言葉に甘えます!』


…しまった、つい怖がらせてしまった。


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