●●●またここから始まる(side 澤村)
委員会で少し遅れてきた清水に鈴木を紹介し、部活を始めようとした時スガが話しかけてきた。
「なぁなぁ大地。跳子ちゃんてさ、今年の1年生に可愛い子が入ってきたって噂になってた子だよな。」
「あー、多分そうだな。名前聞いたことあったし。」
「おー。もしマネになってくれたら、清水の時みたいに周りがうるさそうだな。」
「そんなこともあったな…。」
「んで、なんで早速泣かしちゃったわけ?」
「!見てたのか?!…別に泣かせたわけじゃないぞ。」
「えー?!」
「…多分、旭と同じだ。…ホラ始めるぞ!」
武田先生が見えたので、まだ何か言いたげなスガを一蹴し集合をかけようとする。
が、先生の後ろに意外な人物が見えた。
その坂ノ下商店の烏養さんが、短期間だがコーチをしてくれるらしく、今日も町内会チームと練習試合だという。
なんだか色々と急展開だ。
西谷が出られないことをなんとか鳥養コーチに話し、町内会チームで参戦することになった時、日向が大きな声をあげた。
「あー!旭さん!」
「!!!」
その名前を聞き、俺たちは思わず振り返った。
事情を知らない鳥養コーチの勢いに促された旭が、気まずそうに顔を見せる。
そしてセッターがいない町内会チームにはスガが入ると言い出した。
スガにも思うところがあるのはわかっていた。
今アイツは強い気持ちでそれを自ら乗り越えようとしている。
(俺には何もできないんだな…。)
主将としての不甲斐なさが胸をよぎる。
しかしどんな状況であれ、またこのメンバーが揃った。ここからまた始めればいいんだ。
これでまたあいつらと繋いでいける。
それに−
チラリと清水の隣で緊張している様子の鈴木に視線を向けた。
どうやらバレーが大好きそうな、勝利の女神も増えたしな。
俺は頬が緩みそうになるのを慌てて引き締めた。
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