テンプレート・ストーリー


夕食を摂り風呂を済ませ寝衣に着替え、鬼灯の部屋にて少し眠気を感じてきた頃。
鬼灯が「実は」と突然話を切り出した。

「名前さんにプレゼントがあるんです。突然ですが…受け取ってくれますか?」
「えっ」

不覚にも、心臓が高鳴ったのを感じる名前。
鬼灯は部屋の隅からいそいそと何かを準備し始めた。
あんな激務をこなす中でいつの間に用意していたのか気になったが、それ以上にサプライズプレゼントの嬉しさで口がふにゃふにゃと緩んでしまう。
いつも鬼灯は何故か変な方向性から迫ってくるので、たまには正攻法からと思ったのかもしれない。
名前がそんな平和な事を考えているとラッピングされた大きな袋を持って、鬼灯が名前の隣に腰掛ける。

どうぞ、と贈られ、名前は一層笑顔を輝かせた。
受け取った袋はぎりぎり名前が抱えられるくらいの大きさで、ずっしりと重い。

「わー、ありがとうございます!随分大きいですね?」
「はい。…服、とでも言っておきましょうか」
「ふ、服?」

そう言われても袋の重みは明らかに服のそれではないし、ごつごつとした感覚もある。

「…そ、それにしては大きくないですか?何かごつごつしてますし…」
「どれも名前さんに似合いそうな物ばかりで目移りしてしまって、最終的に気に入った物を全て買ったらこんな事になりました。そうしたら靴や髪飾りまで気になってしまったので…ごつごつしてるのはそのせいかと」
「え、えええ上から下まで!?たっ、高かったですよね!!すみません!」
「いえ、名前さんに着て欲しくて私が勝手に選んだのです。ですから名前さんが着てくだされば私はそれだけで嬉しいです」
「ほ、鬼灯さん………」

名前はときめきを隠すために話題を逸らす。

「あ、開けてもいいですか?」
「どうぞ」

リボンをほどき中身を出す直前。
名前は手を止めて鬼灯を見上げた。

「………あの。…た、大切に着ますね」
「…はい。ありがとうございます」
「や、やだ。お礼言うのはこっちの方ですよ…!」

顔を赤らめてそう言うと、彼女はわくわくした様子で袋に手を突っ込む。
そんな彼女を見て、鬼灯の瞳が妖しく光った。

「………………ん?」

ハンガーのフック部分らしき物を探り当て、袋から服を取り出すと、名前は何度か瞬いて一度それを袋に戻した。
そしてもう一度取り出しまじまじと眺める。
取り出したそれは服と言われれば服だったが正確には服ではない。
少ないビキニの布地は明らかに大事な部分を覆う為の物で、しかも虎柄である。

「………………こ、これは…?し、下着?ですか?」
「ラ●ちゃんのコスプレ服です」
「は?」
「ですから、●ムちゃんのコスプレ服です。名前さんも聞いたことあるでしょう?語尾が「だっちゃ」のオニ型宇宙人です」
「いやいやいや………え、これ服?服なんですか?」

まさか、と事の全貌を予想した名前は袋をひっくり返して中身をベッドの上にぶちまけた。
案の定、どう詰めていたのか出てきたのはコスプレ衣装のオンパレード。
先程の虎ビキニとセットであろう同じ柄のブーツに付けツノ。
ヘッドドレスとやけに伝統的正統派なメイド服に革のブーツ。
警官帽子に婦警服にストッキングにハイヒール。
三角帽子、ローブ付きの黒いゴスロリドレス、ニーハイソックス、杖。
朝放送されている女児向けアニメ鬼卒道士チャイニーズエンジェル群青の衣装。

「………これのどこが服なんですか!?」
「別に普段着とは言ってない」
「ヒイイイ反論できない!ぜ、絶対着ませんからね!」

宣言し、ベッド上の服や靴を片っ端から袋に入れ直す名前の傍ら、鬼灯は携帯電話を取り出すとピッとボタンを押した。

『………あの。…た、大切に着ますね』
「!!!」
「言質はとっていますよ。大切に着てくれるんですよね?」
「………ふっ、夫婦でも無いのにこういう事は良くないと思うんですけど………!!」
「安心してください、私も弁えています。一線を越えるような事は決してありませんから…」

例のビキニを片手に詰め寄ってくる鬼灯。
名前はあまりの恐怖に頬をひきつらせ、誤ってベッドから転落した。本棚へ追いやられ逃げ場の無くなった名前に伸びる鬼灯の魔の手。
その夜、名前の断末魔が閻魔殿中に響き渡ったとか渡らなかったとか。

・リクエスト内容「鬼灯様からトータルコーディネートのサプライズプレゼント」
謝罪の気持ちはありますが後悔はしていません。

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