セーラー服と秘密結社 | ナノ

K・Kより愛をこめて 1/5   

『――――――ん…』

名前が目を覚ますと辺りは濃霧に包まれていた。
どこを向いても数メートル先すら見通せない。

『どこ、ここ…』

呟いて名前は、自分が地面に座り込んでいる事、腕の中に何かを抱え込んでいる事に気が付いた。
一体自分は何を抱えているのか、下を見て名前は息を呑み、そして泣き崩れた。

『あああああ…!!』

女性の遺骸が、名前の腕に包まれていた。
その胸には貫かれたような大穴が空き口の端からは血を流している。
名前はきつく目を閉じて、腕の中の女性を抱き締めた。
閉じられた瞼から溢れる涙が濡らしていく。
ふと人影が差して、名前は顔を上げた。
その瞬間、名前の顔が悲しみと怒りで歪んでゆく。
眼前に一人の男が優しく微笑みながら立っている。
銀髪が揺れ、赤い両目が名前を見下ろす。
透き通るように白い肌をした男の腕が名前へ向かって伸ばされた。

『―――――』

男は名前に優しく語りかけるが、心を乱した彼女には届かない。
名前は震えながら男を睨み付け、指腹へ爪を食い込ませ叫んだ。

『殺してやる………!!』

名前を叩き起こしたのは、チェストの上で鳴り響くスマートフォンのけたたましいアラームだった。
暫くどちらが夢か現実か考え込んだ後名前は自分の顔をつねった。
痛みがあっても覚めないので現実だ、と寝惚け眼で思いながら腕だけを動かしスマートフォンの在処を探る。
爆音と共に振動し続けるスマートフォンを引き寄せると、アラームが切れるように名前は画面をタップした。

朝食をすませ、セーラー服に着替えた名前はテラスへ行って昨日の帰りに買ったばかりの如雨露を手にした。
外にある水道で水を汲み、ある鉢へ向かう。
両手に乗るサイズのその鉢は昨日如雨露と一緒に名前が買ってきた物だ。
土の表面にはまだ何も生えていないが、土中には昨日の昼にある老婆から貰った花の種が埋められている。

名前はそっと土を撫で、如雨露を傾けた。
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