セーラー服と秘密結社 | ナノ

WOMEN IN BLACK 1/5   

ライブラに新人が加わってから一週間。
新人名前とその先輩ザップは先日の魔獣脱走事件の報告書をまとめている。

報告書自体はすぐに提出したのだが、あまりに―――というよりザップが担当した部分が幼稚園児の絵日記より最低なレベルだったので二人で協力して作り直せ、とスティーブンからのお達しだった。

名前の隣に座るザップは、最初は首を捻って唸りながら必死に記憶を辿って文章を考えていたが、5分も経たない内に集中力が切れたらしくスマホを見始めた。

名前はその画面が偶然見えてしまい、しかもそれが女性とのメールのやり取りだったので、名前は呆れて言葉も出てこなかった。
更に女性の名前は先日会っていたマリーでは無くジャスミンだった。

名前と出会い二日目から彼は中々の最低さを見せたが、会う度に更なる最低な面を見せてくれるので名前は逆に感心していると、ふわりと風にのってチェイン・皇がテラスから入ってきた。
そのまま彼女はザップのスマホの画面に器用に着地する。
メールに夢中のザップが異変に気付いて見上げる頃には彼女は侮蔑の視線を彼に浴びせかけていた。

「新入りの、しかも年下の女の子に報告書任せて自分は女とメールなんて随分良い身分ね、銀猿?」

そのままチェインが希釈を解いてもとの重さに戻る。比例してザップの手首が関節とは逆方向に軋みながら曲がっていく。

「手首!手首がぁぁ!!」

チェインは骨折寸前でザップから降り、既に書類作成に戻っていた名前の頭の上で見事な宙返りを披露し名前の隣に立った。

「オイッ!ヤリ逃げかコラ!!」

ザップに怒鳴られようとチェインはそっぽを向いて相手にしていない。

あまり降り幅が無いその表情は何となくクールな印象を受ける。
事実ライブラに異動になってから一週間、名前とチェインの会話は初日の自己紹介だけだった。
仕事柄、必要以上の干渉はしない主義なのかもしれない。
それを言ってしまえば先程から白い目でザップを睨んでいる副官スティーブン・A・スターフェイズも当てはまるのだが。

「ザップさん」

名前が騒ぎ立てるザップの耳元に顔を近付けた。
突然縮まった距離感にザップはらしくもなく動転し、体勢を崩しかける。

「な、なンだよ」
「…スティーブンさんが」

こそこそと言って、名前はザップの視線を誘導するようにスティーブンを見やる。
ザップも目線だけ動かしてそのデスクを見る。
そこに座る男はペンのみを走らせながら、冷徹な眼差しで微笑んでいる。

「………!!」

名前はそちらにぺこりと頭を下げて、ザップにペンを差し出す。

「………」
「ハッ、残念」
「オイ表出ろやこのクソメス犬アマがァァァ!」
「ウキウキうるさいよ、モンキー」

動揺を見透かされた上にそれを鼻で笑われた事が頭にきたのか、ザップはチェインの分かりやすい挑発に乗ってしまった。
ザップは粗暴な言葉で捲し立てるが既に彼女は相手にしていない。

そんな二人の様子を見て、名前にはふとある疑問が浮かんだ。
しかし到底本人達に質問する気にもなれなかったので、名前がじっと彼らを観察しているとある人物が傍に寄ってきた。

「どうしたの名前っち!ザップっち達のことジーッと見つめて!」
「あ、K・Kさん…」

とびきりの笑顔で話しかけてきたK・K。
ここに来て長い彼女なら知っているかもしれないと名前はK・Kに心中の疑問を投げかけた。

「ザップさんとチェインさんって仲良しですね」
「あら」

その言葉にK・Kは笑みを深めた。
K・Kはにやにやと笑いながら、ザップに代わって名前の隣に腰を下ろす。

「そう見える?」
「はい」

名前は逆隣を見やる。
憤慨するザップがチェインににじり寄っているが、彼はついにデスクから席を立ち背後に回ったスティーブンに気がついていない。
次の瞬間にはチェインは姿を消して、ザップは足下を凍らされて動けなくなっている。

「とても仲良しに見えます」
「そっかそっかー。ンフフ」

何故か上機嫌になるK・K。
名前はスティーブンに必死に謝罪するザップと笑顔のK・Kを見て心の中で首を傾げた。

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