(ヒュアス←リチャ)
何かいろいろぶっとんでる書きたい部分だけ書いた産物





「ねぇヒューバート。君は一体何様のつもりなのかな。君は産まれたときから当たり前の様にアスベルの隣に暮らし、アスベルと同じ両親に当たり前の様に育てられ、アスベルと同じ部屋で当たり前の様に寝食を共にし、アスベルと誰よりも多く当たり前の様に会話をして、さらにはアスベルから沢山の感情を与えられているのに気づこうともしない。ねぇヒューバート、君は一体何様のつもりなのかな。君さえいなければアスベルは故郷を追い出されることも、君を守れるるように強くなろうとすることも、君を想って泣くこともなかったのに。ねぇヒューバート、君は一体何様のつもりなのかな。ヒューバート・オズウェル。それが今の君の名前だ。恥ずかしくないのかい。名高いオズウェルの、しかも少佐である君がたかだか領主とはいえ辺境伯であるアスベル・ラントに固執するなんて。親が原因とは言えラントを棄てた身分の君が、だ。血が繋がっているとはいえ君は今やストラタの人間。そんな君がアスベルに触れようなんて愛されようなんて………………烏滸がましい。アスベルは、アスベルは僕の弟なんだ。例え成り上がりだ、悪魔の落とし子だと罵られようと、アスベルは
僕の愛しい愛しい一人だけの弟なんだ。アスベルは僕を兄と呼んだのだから、例え血は繋がっていなくても兄弟になり得るんだよ。知ってたかい。それなのに君ときたらなんだい。アスベルのことを兄と呼ぶだけでは物足らずにアスベルに愛されようとする。これだけ満たされていれば充分だろう。何が足りないんだい。地位か、名誉か、はたまた財産か。ねぇヒューバート、君は一体何様のつもりなのかな。そろそろ僕にアスベルを譲ってくれても良いと思わないかい。アスベルも、きっと心の中ではそう望んでいるよ。僕には分かる。「ヒューバートが好きなんだ」だなんて、君が無理矢理言わせているんだろう。実際アスベルは僕を選んだ。そうでなければ彼が僕の隣にいるわけないのだから。そうは思わないかい。ねぇ、ヒューバート、黙っていないで何か答えたらどうだい」
「………兄さんはどこですか」
「あれ、僕の話を聞いていなかったのかな。それとも理解できなかったのか。アスベルは君の兄ではないのだから、兄さん、という呼び方は適さない。アスベルは僕の弟であって君の兄ではないのだから。」
「………兄さんをどこにやった」
「………ヒューバート・オズウェル。これは命令だ。アスベルのことを兄と、二度と呼んではならない。アスベルは君の兄ではないのだから。君がアスベルを兄と呼ぶことは、例えかつて共に旅をした仲間といえども赦されないよ」
「………兄さんを返せ」
「……ヒューバート」


ヒューバートは拳を握りしめ、リチャードを睨んだ。リチャードはおどけた風に深く溜め息を吐き出すばかりだ。傍らの兵士は怯えていた。

ーー兄は、兄はぼくだけの兄さんだ。リチャード陛下の弟………ましてやものではない。自分が弟でなかったら、確かに兄は僕のことを目にもくれなかったかもしれない。友人にもなれたかどうかわからない。それでも、それでも兄が最終的に選んだ人間は、弟としての僕ではなくヒューバートとしての僕なんだ。兄に想いを寄せ続ける幼馴染みでも、命を助けてくれた小さな少女でも、常に傍にいて支えてきた師でもない。この僕なんだ。少佐としての地位や名誉なんて兄と比べるまでもない。僕にとっては兄が全てで、兄もそれを受け入れてくれた。無理矢理言わせているんだと目の前の国王は宣う。もしかしたらそうなのかもしれない。兄は優しい人だから、好きだと告げる僕に同情しているだけなのかもしれない。でも、それでも構わなかった。弟としての僕から始まったとしても、兄は僕に向き合ってくれたんだ。僕を認めて、僕に恥ずかしながらも愛の言葉を囁いてくれる。僕には兄しかいない。兄が全て。嘘でも兄が僕を好きだと、僕を愛していると言ってくれるなら、ぼくはそれでいい。それがいい。





(ヒューバート、)





兄の声が頭の中で再生される。透き通る声。僕だけに見せる甘えた表情。地位も名誉もいらない。そんなもの、何の役にも立たない。全部捨てても、構わない。ただ兄さんに会いたい。いつもの柔らかい笑顔で名前を呼ばれたい。兄さんは、兄さんは兄さんはーーー!









「僕は兄さんを愛している」












愛欲に溺れた国王がなにかを叫んだ。怯えきった表情だった傍らの騎士が自分に向かって剣を抜いたのを確認し、僕は両手を銃にかけた。騎士は近づいてくる。僕は国王に向かって走り出した。銃に手をかける。国王はまた何かを叫んだ。僕は無視した。







(兄さん、待っていてくださいね、あと少しで会えるから)








「………っヒューバートッ………!!」






銃の引き金を引いた瞬間、誰かの声が、聞こえた気がした。