(現代アルレイ)


「……ねぇねえ、レイアちゃん。俺ぇ、最近とある夢を見るんですよ。ちょぉっとお兄さんのお話し聞いてみたくないですかぁ?」
「へー!ふーん!この漫画おもしろいねっ!もって帰っていい?あっ、ちなみに拒否は受け付けてないからそこんとこよろしくっ!んー……袋そこら辺に落ちてないかなぁー」
「あぁ、それねー別にいいぜー持ってきな……あ、袋はそこに転がって……って!!ちょっと!!少しは俺の話にも興味もてよ!漫画もいいけどさぁ!俺、痛い子みたいじゃん!!可哀想みたいじゃん!!おいっレイア!!レイアってば!!」
「……あーもうっ!アルヴィンくんうっさいよ!!……しょーがないなぁこのレイア様がアルヴィン君の恥ずかしい話を聞いてやろうじゃないですか!……で、どんな夢なの?」
「……な、何故、恥ずかしい話と決めつけたし……ふふふ……聞いて驚けみて笑え……なんとなんと!!俺がレイアちゃんを銃殺するゆブハァ」
「……聞いて損したわ!!ちょっと黙ってアルヴィン君!!私はこれからここにある漫画をどうやって袋に詰め込むかについて真剣に悩むとこだか「…そ、それでな……」
「黙らない……だと……!」
「もっと真剣に聞けよ!!ここからがいいとこなんだって!!まさかのまさか!!俺がお姫様なんだって!!人魚姫なんだって!!すごくね!?超ナイスキャストじゃね?!」
「……うげぇ」
「…あっ、何なのその反応……俺傷ついちゃった、傷ついちゃったよ!!」
「あーはいはいちょっと待って…えっとーつまりー……その展開でいくとぉー私の役割は……王子様?」
「……さすがレイア!!脳筋族のわりには答え出すのが早い!!ピンポンピンポン王子様でだいせーかーい」
「……へへへ。クイズだけは得意なんだー……って、今何か言った?」
「言ってないですごめんなさいごめんなさいだからペンを背中に突きつけないでくださいお願いします……でもなぁ、普通の人魚姫の展開とはちょっと違うんだなぁこれがまた」
「…へー……アルヴィン君の話の割にはちょっと興味でてきたかも……で、で、どんな?」
「おまっ……そろそろ泣くよ?……んー……?内容?ひみつ?」
「……へ!?ちょ、っ、ここまで引っ張っといてそれはなくない?!」
「まぁーいいじゃん。男には秘密にしなければいけないことの一つや二つあるってことで」
「……アルヴィン君が勝手に話始めただけなのに!?……えー……結局私に分かったのってアルヴィン姫が私を銃殺するってとこぐらいなんだけど……」
「……まぁーだいたい合ってるよそれで」
「……何か腑に落ちないなぁ……」
「まあまあレイアちゃん。お兄さんが大人の財力で何かしら奢ってあげますから機嫌なおしてくださいよ」
「……あははは!!アルヴィン君そんなにお金もってないくせにー!!大人の財力ってなにそれー」
「……うっせ!おごってやるっていってんだからちょっとは可愛いげみせろや!!」
「あははははは!!」


笑い転げているレイアの手を引き、思いっきり自分の方に引きよせる。「アルヴィン君、今日は積極的なんだね」なんて満面の笑みで言ってくる彼女の手は温かくて、優しくて、繊細で、それで、


(生きている……)


少し安心してしまっている自分がいたことに悲しくなった。



***


(これで……26回目、だっけ)


数えるのも馬鹿馬鹿しくなってしまうぐらいに、俺は同じ悪夢を繰り返し見続けていた。
全くの他人から見ればこっちの世界の方が彼女が幸せになれるのではないかと疑ってしまうぐらい幸せな世界。彼女が自分ではない誰かと結ばれてしまう世界。白い純白のドレスを着た彼女はとても綺麗で、とてもよく似合っているけれど、彼女の傍らにいるのは俺じゃない。白衣がよく似合う、彼女の幼馴染み。そして、彼女の初恋にあたる人。彼が心から好いている、彼の根本を変えた人物がいない、彼女の望むであろう世界。俺が存在していない世界。


(……あー俺ってばカワイソー。レイアちゃんもどうしてこんな良い男が隣にいるのに気付かないんだろうねー理解に苦しむわー)



何度も何度も同じことを繰り返している自分がおかしくて、馬鹿らしい。あまりにも馬鹿みたいで、馬鹿にされているみたいで、彼女と自分は釣り合わないとでも言われているみたいで……苛ついた。



(あー……またこのエンディングかよ……萎えるなほんと)



彼女の眠っているベッドの横に立ち、右手で銃を握りしめる。夢の世界の彼女の寝顔はいつも見ている現実の彼女の寝顔と何も変わらないほどに同じで、銃を持つ右手が震えた。窓からもれる月明かりがとても眩しくて今の自分にはとても痛かった。ちくしょう。月までもが俺をバカにしやがる。何度繰り返してもこの作業だけは慣れそうになかった。引き金を引くだけなのに。慣れたくもなかった(夢とはいえ、だ)なんて自分勝手なんだろうと自分で自分に呆れる。こんなにも夢の中の彼女は幼馴染みと結ばれたいと願ってやまないのに俺ときたらーーーー俺ときたら、彼女は自分と結ばれてほしいと、こんなにも願ってやまないのだから。



「じゃあな王子様。次こそ……次こそはお前を……」




お前をあいつから





( )




銃の引き金を引く瞬間、レイアの口許が微かに動いた気がして目を見開く。彼女はなんと言った?俺に、何を頼んだ?俺に……?
……あまりに自分に都合の良い言葉が聞こえた気がして、俺は笑いをおさえることができず、その場で笑い転げてしまった。さすがレイアちゃん。俺の笑いのツボ、分かってるじゃねーの。……でも、この世界のレイアも、現実世界と同じで意地が悪いらしい。………そういうとこは変わんないのねこの馬鹿レイア。



「……とんだお転婆王子だよお前は」




夢が覚める瞬間、夢の世界のお姫様は愛する王子様に一つ、キスを送った。人魚姫の物語は悲恋で終わる。お姫さまが泡にされておしまい。そんなの、間違ってるだろ?お姫さまというものは王子様と結ばれるために存在しているのだ。王子様とお姫さまが結ばれないなんてあり得ないし、あり得てはいけない。だって、お伽噺というものは子供たちに夢を与えるものなのだからーーーーー






例えそれが夢の世界でも、な




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