(ソフィアス)
軽すぎるカニバ表現あり





ソフィにとってアスベルとは光だった。自分を生かし、命をかけてまで守ってくれた存在。また、ソフィにとっても守り抜きたい存在。優しくて、穢れを知らずに純真培養に育てられてきた少年。だからこそソフィにとっては誰よりもアスベルが大切で、必要だった。ヒューマノイドには命は無いけれど、生きることはできるから。ソフィにとってアスベルとは生なのだ。彼がいなくなってしまったらソフィはきっと呼吸の仕方も忘れてしまうだろう。それほどに好きでたまらなかった。人工的な機械人形に感情を教えてくれたのは他の誰でもないアスベルだった。ソフィはそんな大事で止まないアスベルの腕にそっと唇を近づける。アスベルはか弱く見える少女が、次にどんな行動を起こすのか分からず、ただただ首を捻った。



「ソフィ……?」
「 ごめんねアスベルごめんねすぐ終わるからごめんね」



ソフィは思う。 でも人間はいつかは死んでしまうから。ヒューマノイドとちがって、永遠に生きることは不可能だから。昔は皆の方が私より小さかった。それなのに今では私より成長してしまって……それがとても寂しい。だから私、いっぱい勉強したんだよ。いっぱい本を読んで……勉強して。好きな人たちとどうやったらずっと一緒にいれるのか……そしたらね、いっぱい読んだ本のなかに一冊だけその方法が書かれた本があったんだよ。アスベルにだけ秘密に教えてあげるね。……その方法はね



「……ソフィ………ひ、いぎぃ……っ!?」
「こうするんだって、本に書いてあったの」



アスベルと同様にソフィはあまりに純粋だった。純粋で、純真で、あまりにも無知だったのだ。ヒューマノイドには痛みはない。だからアスベルの痛みがわかるはずもなかった。ソフィが見つけた一冊の本。それはアスベルに苦痛を与える切欠でしかなかった。


「いだっ……ぃ……ソフィ、いたい、……」
「いたい?いたいって、どういうことなの?ごめんねアスベル、私にはわからない。いたいって、どういうことなのか。わからない……ヒューマノイドだから、私は皆とは違うから。でも、アスベルとは一緒にいたいと思うの。こう思うのはおかしいことなの?ヒューマノイドなのにこんな感情紛いのものがあるのは変なことなの……ねえ教えてアスベル……」
「……っソフィ……」


アスベルには何も分からない。ヒューマノイドであるソフィのことが、人間であるアスベルにはなにも分からない。大事で大切で何よりも守りたい存在であるのに、自分はソフィのことを何も分かっていなかったのだということを、誰よりも純粋無垢なソフィ本人によって知らされてしまった。痛みで遠退きそうになる意識を何とか堪えて、アスベルはソフィを抱き締める。せめてこの暖かさだけでも彼女に伝わってほしい。抱き締めた彼女の体は震えていた。彼女はヒューマノイドだから痛みが分からないと言った。嘘だ。だって彼女はこんなにも辛そうなのだ。肉体に痛みなんてないのかもしれない。痛覚なんて、ないのかもしれない。でも彼女の心は確かに傷ついていた。涙の代わりに行動で示すしか出来ない哀れなヒューマノイドは、考えに考え抜いて、そして人間に置いていかれないように実行に移した。何もおかしいことなんてなかった。ただ彼女をここまで追い込んだのは、追い詰めたのは……



「……アスベル、ずっと一緒にいようね」


「あぁ……ずっと一緒だよソフィ……」



せめて自分だけはこの少女の隣にいてあげよう。この少女が、本当はとても弱いこの少女が、もう寂しさなんて感じないように。



青年は利き手であり既に赤く染まっている右腕を、少女の唇に差し出した。青年は微笑んで、それから少女も微笑んだ。それはまるで愛の誓いでもするかのように、純真無垢な微笑みでーーーーー少女は青年の腕に噛みついた。





ずっと一緒





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