「やぁ、弟くん。元気にしてたかい」
「……あなたに弟なんて呼ばれる筋合いはありませんけど。何しに来た……かは言わなくていいですからね。面倒ごとは勘弁してほしいので」
「何を隠そう今日はアスベルの弟である君に相談があってきたんだよ」
「だから言わなくていいと…」
「フレン・シーフォについて君はどう思う」
「もう、相談しに来た人の態度ではありませんね」
「まぁいいじゃないか。僕と君はこの件に関しては同意見だと思うんだけど」
「たとえそうだとしても、貴方に弟くんなんて呼ばれたくないです」


弟くんなんて呼ぶ人はアンマルチアの女性だけで充分だ。それにこの陛下に弟くんなんて呼ばれて……他意がありそうで嫌だ。


「……フレンさん、ですか。いきなり兄さんのもとに現れては我が家に勝手に居候しているどこぞやのニートよりはマシだと思っていますが……それが?」
「……君はアスベルを取られてもいいと言うのかい!?」
「……はい?」


あまりに要領を得ない話しぶりに苛立ちが隠しきれない。眼鏡のふちを押し上げて、とりあえず彼が話し出すのを待つことにする。兄が関わることにはいつでも全力で。それが彼、ヒューバート・オズウェルのモットーだった。


「フレンは確かに真面目で堅実。やると決めたことは最後までやり抜く……まさに騎士のかがみだ。アスベルがそんな男に惹かれないと思っているのかい」
「……でも、兄さんは」


兄さんは領主だ。騎士ではない。


「君の言いたいことは分かっているよヒューバート。でもアスベルはもともと騎士になりたかったんだ。領主じゃない。誰でも守り、助けることができる、騎士になりたかった。 ……だからこそ、フレンの出現は僕らにとっては……とても痛い。そうだろう?だから弟く……ヒューバート」
「……なんですか」


嫌な予感がひしひしと伝わる。何故かこのあとに続く言葉を予測できてしまう自分がいたからだ。僕と彼にとって一番効率が良くて、確実な提案ーーーだとは分かっていても溜め息を出さずにはいられない。面倒なことに巻き込まれたな
、なんて、今更すぎる。なにかと他人を惹き付けてしまう兄の「弟」である僕は、最初から巻き込まれていたも同然なのだ。(……決して当事者ではありませんよ。ええ。ありませんとも)




リチャードはきっとこう続けるはずだ。




「「僕たちは共同戦線を張るべきだ」」



目の前の陛下がにこりと笑う。憎らしいほどに清々しい笑顔だ。反面、僕の唇の端はひくりとつり上がった。もうこうなったら自棄になるしかなさそうだ。……もとよりアスベルのこととなると傍目も気にせず突っ走ってしまう傾向にあるわけだが……まったく兄さんは。どうして貴方は一癖も二癖もあるような人にばかり好かれるんでしょうか。(追い払う身にもなってください!!)



「……ここまで話を聞いたからには仕方ありません。付き合いましょう」
「……君も大概素直じゃないね」



シェリアに教官、はまだいい。アスベルとそれなりに深く関わりがあり、親しい仲であるから。ソフィに限っては娘だ、また話が違う。それに比べて後からやってきたにも関わらずアスベルの心を捉えてしまいそうな人間、フレンやユーリは……我慢ならない。兄さんの視線は、まだ弟である僕のものでなければならないのだ。……だけれど一人でこの二人の相手をするのは相当骨が折れそうだ。ましてやエステリーゼ様の御友人にあたる人物。(そのエステリーゼ本人もアスベルを狙っているということをヒューバートはまだ知らない)……それならばーーー道は一つしか残されていない。そちらに王族がいるというならば、こちらだって王族で勝負しようじゃないですか。形振りなんて、構っていられない。ほんと、困り者の兄を持って弟は大変です。






「……とりあえずコンビ名でも決めましょうか」
「……形から入る男だったね……君は……」






兄が可愛すぎて夜も眠れない(物理)






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -