カイスタ
捏造設定




カイル・デュナミスは家族を愛していた。それはもう誰よりも、どんなものよりも愛していた。自分の本当の肉親であり、今まで、いや、今でも自分に愛情を沢山込めて育てあげてくれているルーティ…カイルの母に当たる人物はもちろん、一緒に孤児院で育ったロニや、他の子供たちにもそれは当てはまる。彼は「家族」と名前のつくもの全てを愛すのだ。友達や、親友なんていう浅い関係より、家族という血を分けた存在を。それはもう、全身全霊を込めて、心から。



そんな彼にも特別、カイルには誰よりも何よりも、もっとも「愛している」人物がいた。最愛の人物。それは友愛や家族愛なんてものをすでに超越しているほどに、カイルにとっては愛してやまない存在だった。誰よりも強くて、逞しくて、かっこよくて、自分が英雄を目指した理由……自分が小さな時に亡くなってしまっていたと思っていた偉大な存在……でもそれは違う。違ったんだ。英雄になりたいなんて、彼に少しでも近づくための口実にしかすぎなくて。どこかにまだ彼はいるんじゃないかって、そんな淡い期待を込めて探しつづけた愛しい人。
……でも彼は……あなたは、今……



「カイル」


「……っスタンさん!」



(あなたは今、ここにいる!)



誰にも代えられないただ一人の父親。英雄になろうとしたただ唯一の原因。彼と同じ道を歩みたかったから。彼と同じ道を歩めばいつかまたどこかであえるんじゃないかって……死んだなんて嘘だった。また巡り会うことが出来た。そりゃそうだよ。英雄が死ぬわけないんだから。スタンさんは世界を救った……皆の英雄。俺だけの父さん。それが何よりも嬉しくて、唯一の誇り。スタンさん。父さん。もう、離れない。絶対に。



「スタンさん。好き、です。」

「……俺もカイルのこと、大好きだぞ!!」




青少年は夢を見る




「……おいルーティ。あいつは何を見てるんだ」

ジューダス、もといリオン・マグナスは端正な顔をそれはもう嫌そうに歪めて自分の姉であるルーティに言った。

「何をって、スタンに決まってんでしょ」
「ふざけるな」
「ふざけてない」
「ふざけてない、だと?お前は本気でそれを言っているのか?」

ルーティは何も言わない。言うことができない。

「カイルは、どうして」


リオンはそこで言葉を続けるのをやめた。代わりに小さく舌打ちをして、遠くにいるカイルを見やる。……あいつは、どうして。



「……可哀想なやつだな」



現実を受け入れられずに幻想を見続けている少年に向かって、リオンは静かに一言そう言った。彼にその言葉の意味が届く日はないのだろうと、リオンは二度目の舌打ちをした。


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