カゲロウデイズパロ
ユーリ視点



まただ。また死んだ。またあいつは死んでしまった。もう何度死んだかなんて、数えるのも億劫なほどにあいつは何度も死を繰返す。何回も、何十回も、何百回でも違う死に方で、結局同じ死をあいつは繰り返すのだ。

「また、繰り返すのか?」

俺にそっくりなそいつは俺にそう尋ねた。当たり前だ。俺の答えは変わらない。あいつが、あいつが生きていなきゃ駄目なんだ。俺にはあいつが必要で、あいつにも俺が必要なんだ。これは自惚れでもないし、ましてや自虐なんかでもない。俺は。だからこそ、俺、は、



「……次こそは絶対生かしてやるからな……アスベル……」



カゲロウデイズ



「ーーーーり……ゅ………ぃ……………っ……」
「ん……ん……?」
「……ーーリ……ユー…………おい!!ユーリ!!」
「……は……?………何だよアスベル………」


目を覚ましたそこはバンエルティア号とよばれる船の中。比較的大きな船の一室でアスベルのテノールの声が反響した。寝起きに聞くには些か喧しい。


「うっせぇな……一度呼べば分かるっつぅの。」
「お前がいくらたっても返事をしないからだろ!!まったく……いつまで寝てる気だよ……今何時だとおもってんだ」
「あーはいはい。大好きなフレン隊長のおかげで小言が上手くなったな。……で、何の用だ?夜這いなら大歓迎だけど?」
「よよよよ、よば…っ!?そ、そんなわけないだろ!!!!…………いつまでたってもそんなだからフレン隊長に怒られるんだぞ……まったく……」


ぶつぶつと小言を言ってくるアスベルの声が何故だかとても懐かしかった。もうずっと聞いていなかったようなそんな錯覚に陥ってどこか違和感を覚えた。……違和感って何だ?アスベルの声なんて、毎日聞いているはずなのに。

「で、結局何の用なんだ?」
「……あ、そうだよ!!俺は今からロイドやルーク達と一緒に依頼をこなしにいってくるからユーリは今日一日ぐらい大人しくし「駄目だ!!」


眼前には驚きによって目を見開いたアスベル。自分でもどうしてここまで焦っているのかなんて分からなかった。それでも本能が告げている。こいつを、アスベルを、連れていってはいけない。絶対に。


「ど、どうしたんだ、そんなに大きな声を出して……」
「ぁ、いや、わりぃ……とにかくお前は行くな、これ命令。代わりに俺が依頼こなしてくるから。それで良いだろ。」
「な、なんだよいきなり……」
「じゃぁ、俺はその依頼とやらに行ってくるからお前は大人しくしてろよ、じゃあな」
「あ!?おいユーリ!!」


アスベルが止める声も聞かずにロイドとルークのもとに急ぐ。
これでしばらくは安全……だと思う。何が安全なのかは、よくわからないけど。……あぁ、まったく、全然俺らしくない。一体どうしたと言うんだ。どうしてこんなに焦っているのかその理由が見つからない。どうしてこんなにもあいつを外に出したくないのか。


「くそっ……苛苛しやがる……なんだってこんなに怖いんだ……っ!!」


アスベルと離れることがこんなにも怖い。なにかを無くしてしまいそうで、とても怖い。




(また、繰り返すのか?)





頭の中で、誰かが俺に囁いた気がした。




***



ようやく依頼が終わり、ロイドとルークと一緒にバンエルティア号の中に入ると、思わず顔をしかめてしまうほどそこは空気が重かった。ルークはいつものように、誰かいねぇのかよ!!俺が帰ってきたんだぞ!!とわめいていたけれどドアを開けて出てきたガイに何かを言われて、一気に走り去って出ていった。俺とロイドは何か悪いことが起きてしまったことをそこで理解した。



(……なんだ?何がおきてんだ?)



しばらくその場でどうして良いか分からず固まっていると、いつの間にか目の前にはフレンがいた。そのフレンも、やけに顔が蒼白くて、今にも倒れそうに俺には感じられた。そんな様子のフレンは静かな声で、「僕が何を言っても落ちついて聞いてくれ」と言った。俺は一先ず頷いたけれど、その次にきたフレンの言葉の意味を理解することができなかった。こいつは、フレンは、何を言っているんだ?


「……おい、もう一回いってみろ」
「死んだんだ」
「……何いってんだ」
「アスベルが、」
「おい、」
「死んだんだ」
「やめろ……」
「アスベルは」
「フレン!!冗談もほどほどに……!」
「死んだんだよ」
「ーーーーーーっ!!!」



死んだ。


アスベルが、死んだ。


咄嗟にフレンの首もとを掴んで殴ろうとした拳を何とかおろすと、フレンの言葉が脳の中に直接反響した。信じたくない言葉なのに。あってはならないことなのに。


なのに、



(………なんでなんだよっ……!)



握りしめた拳を押さえて周りを見渡すと、ソフィがシェリアにアスベルの行方を尋ねていた。ねぇ、シェリア。アスベルはどこに行ったの?死ぬってどういうことなの?ねぇ、シェリア、シェリア、シェリア。
ソフィが何度も何度もアスベルの行方を尋ねて、シェリアはそれに答えられずに泣いている姿がそこにはあった。



……おかしい。


おかしい。


だって、おかしいだろ?


なにもかも始めてみる光景なのに。




(俺は、この光景を知って、いる?)



「……また、繰り返すのか?」



そいつは俺にそう尋ねた。「また」という言葉。この悲劇が何度も繰り返されていることを表していた。いつのまにか周りは暗闇の中で、誰もいなくて、そいつと俺だけで。そいつの周りにはいくつもの時計があった。それはどれもこれも血で濡れていて。アスベルの血だとすぐに分かってしまった。俺は訳も分からずにその時計を……叩き割った。


「……当たり前だ」


何度繰り返すことになってもかまわない。アスベルは、アスベルだけは俺が……俺が救ってやるんだ。この手で。絶対に。


「……待ってろよアスベル。次こそは絶対」



絶対、お前を




(……ユーリッ)




一瞬。
ほんの一瞬だけ、泣きそうなアスベルの姿が目に浮かんで……俺は、

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