現パロカイスタ



親に褒められることは、誰にとっても嬉しいものだと俺は思う。幼稚園のリレーで一位になろうと決めた時も、小学校のクラブの部長を立候補した時も、中学校の文化祭の責任者になった時だって、俺は家族が自分を褒めてくれるのを期待して全てを決めた。その自分の行動規準の中心には必ず父親がいて、父親が自分にとっての全てだった。人にその旨を伝えても理解なんてされない。小さいときには普通だったことが大人になるにつれ理解されなくなっていく。それでも構わない。たとえ人から何を言われても俺のこの考えだけは一生変わらないのだ。父さんは、俺の全てだ。



「それっておかしくない?」




やけに化粧の濃い先生は言った。父親に褒められるために頑張ることがそこまでおかしいのだろうか。褒められる対象が友達でも先生でもなく、父親であることが、そこまで変なのか。俺は至極単純な質問をしただけなのに、先生は顔を歪ませて悲しいものでも見るかのように俺を見た。え。?。なにその反応。あのね、はっきり言わせてもらうわね。先生は貴方のために言うのよ、よく聞いて、あなただってほんとは気づいているはず、あのね、あなたのお父さんはねーーーー






*



「ただいま父さん」




ドアの鍵を開けて中に入る。部屋は暗かった。父さんはまだ帰ってきていないらしい。俺はドアの前に蹲った。早く父さんに聞いて欲しい。今日、特別頑張ったこと。


「あのね、父さん、俺今日もすごく頑張ったんだよ」
「すっごい勉強してテストも満点とったし、体育でも先生に誉められたんだ、部活で目立ちすぎてロニに叱られちゃうぐらい、ロニってば酷いんだよ、俺の頭思い切り殴るんだ、馬鹿になったらどうしてくれるんだよ、まったく」
「それでね、その部活の先輩が変なんだよ、俺が父さんのために頑張ってるって言ったらそれは変だって言うんだ、クラスメイトも友達も、皆親に何でも報告して自慢してるのに俺だけがおかしいって、それこそおかしいよね父さんもそう思うでしょ」
「特に酷いのは先生だよ、教室に呼び出しておれに何て言ったと思う、最低な言葉、教師だとは思えない、冗談で言ったとしても俺は許せない」


暗い部屋の中は俺の気分までをも暗くする。この暗さはいつまで経っても慣れない。父さん。父さん。早く帰ってきて。父さんの髪は太陽を想わせる。俺をいつだって照らしてくれる太陽に。父さんのいない部屋はいつだってこんなにも暗い。




「父さん、早く帰ってきて」






赤く染まった手を擦る。今日一番頑張ったこと。早く聞いて欲しいんだ。ねえ父さん。










ファザーコンプレックス
















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