女性というものは、どうして内面ではなく外面ばかりを気にするのか。僕は心底不思議で仕方がなかった。これは女性にいえた義理ではないのかもしれないが、現在僕を取り囲んでいる人間は皆外面だけを気にして、あまり内面を重視しないタイプに違いない。それは彼らが僕にしてくる質問内容で予想することができる。なんとまあ中身のない。色恋沙汰が関わると特にそうだ。彼らは人を使って自分の恋を成就しようとする。僕は名前すら良く知らないこの女子生徒達に嫌悪感すら抱いた。だってこれからされる質問はきっと僕とは関係のないことだ。そう、たとえば、





「(フレンくん、ユーリくんの好きな人って知ってる?)」




ほら、やっぱり。彼らはそういう人種なのだ。一人では行動を起こそうとせず、群れになって、人から促されて、それでようやく行動を起こす。僕が最も苦手とする人種だ。3人のうち両脇にいた2人が真ん中の一人を押す。早く言え、とでもいう雰囲気だ。顔を耳まで赤くしたその少女に僕が言う言葉はすでに決まっていた。これ以上なにかを言い出す前に早く終わらせなくては。



「君には教えられない、ごめん」
「あの、私、本気なんです、本気で彼の事知りたくて、」
「僕が教えたところで、君は何も行動しないんだろ、同じじゃないか」
「し、します、あの人に振り向いてもらうためなら私は何だって……」
「嫌がらせを、かい」



突然の僕の言葉に彼女の肩が震えた。驚いた、というより、図星をつかれた、そんな表情だった。彼女は口を何度か金魚のように開きかけては閉じた。目には涙が溜まっていて、同じ涙なのに、あの子のように美しいとはとても思えなかった。


「ひ、どい、貴方が私の何を知って……」
「君こそユーリが好意を抱いてる相手の何を知っているんだい、嫌がらせをされるその子が可哀相だとは思わないのか」
「そ、れは」
「僕は何か間違ったこと、言っているかい」


呆然と立ち尽くす少女を傍らの少女達が連れていく姿に僕は呆れはてた。歩くことすら1人では出来ないのか、あの人は。やはり、何もかもがあの子とは違う。誰よりも優しくて、誰よりも他人のことを考える。そのくせに意志が固くて自分の芯を持つ美しいあの子。笑うと、花が咲いたように可愛らしい。彼はもうすでに充分その身に嫌がらせを受けている。精神的にも。身体的にも。だけど彼は笑うんだ。赤茶色の癖のついた髪を揺らしながらその花の咲くような微笑みで。その笑顔を一番近くで見れるのは決して僕なんかではないけれど。だけど、だからこそせめて彼を取り巻く全てから僕は彼を守ってあげたいんだ。僕にとって、彼は生きる意味。僕は彼によって生かされている。信仰にも近いこの感情は、きっと僕から彼に寄せる愛なのだ。彼は、僕のかみさまだ。








(アスベル、僕が君を守るよ)









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しっている、しっているんだ僕は、何もかも、それでも、彼が、彼がそれで幸せなら僕は、僕は、