俺の魚



おさかな



魚は水がないと生きられない。それは誰でも知ってるような当たり前のことで。だから水槽に水を満たして魚を生かすことにした。専用の道具はないので勿論シャワーになってしまうのだが。水槽を洗い、水を満たせば忽ち満タンになった水は美しく波紋をたてて揺らめいて。暫くその波紋を見つめていたが魚はそろそろ呼吸が出来なくなっているころだろう。赦してやるか。部屋に戻るとやはりと言うべきか魚は動かなくなっていた。ぴくりとも。まだ間に合うだろうか。魚を抱き上げ水槽の中に放り込むと途端に魚は水の中を泳ぐ喘ぐ。ぱたぱたと。いやばしゃばしゃか。沫がたくさん水上に上がる。ばしゃばしゃ。魚は元気そうに泳ぎ続けた。げぼ。口から沢山の息を吐き出して、それから魚はまた動かなくなった。疲れてしまったのだろうか。魚をそっと掬い上げるとその体は冷たくなってしまっていた。やりすぎてしまったようだ。調子に乗ってしまったらしい。名前を呼んだ。魚は動かない。もう一度呼んだ。返事はない。また、歯向かったのだ。言うことを聞こうともしない魚。この水槽から出られるはずなどないのに。苛ついて、どうしようもなくて、ただ悲しくなった。



「アスベル、」



返事はなかった






(飼い殺しとはこのことか)

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