ひたすらにまっすぐなあなたへ(ジョルノ×ブチャラティ)





※いとうさん(PXIV:http://www.pixiv.net/member.php?id=76037)の絵からイメージして書きました




あなたの瞳はいつだって前を見ている。迷うことなく自らの歩むべき道を見つめている。その視界にぼくは入れるだろうか。それはぼくに唐突に舞い降りた「恋」という難題の前でとてつもなく大きな障害となって立ち塞がっている。前しか見ることのない瞳にぼくという人間は映るだろうか、それだけが心配でならない。あなたはとてもやさしい人だから、ぼくが「あなたのことが好きだ」と言うだけでぼくを受け入れてくれるだろう。だからこそぼくはその手を使いたくない。あなたを大きく振り回してそしてあなたのすべてを手に入れたい。

アジトに案内されてから数日、彼のことを目で追い続ける、おはようからおやすみまでぼくはあなたの傍にいたいんだ。あなたは周りの人間をとても大切にする。しかしひとりになったときに見せるその目はどうだろう。ぼくにはまるで自暴自棄になった抜け殻のように見える。あなたは誰かがいないとその存在を保てないのだ。誰かがいてはじめてその瞳は前を向ける。あかるい未来に向かって歩いていける。あなたのために存在するその「誰か」がぼくではダメだろうか。そう問うたときあなたは一瞬固まった。困惑するでもない、笑い飛ばすでもない、ただぼくを真顔で見つめて、「すこし座ろうか」と言った。ぼくはその言葉に従った。あえて向かいではなく隣に座る。前に学校で斜め前に座るのは心の距離を感じているということで向かいに座るのは「話がしたい」ということ、そして隣に座るのはとても心をひらいている証だと聞いたことがある。そんな手段があなたという人に通じるのかはわからないがぼくはそんな些細な手を使ってでもぼくのことを意識してほしい、記憶に刻みこんでほしい。

「ジョルノ」
彼のあたたかくしかし怜悧な声がぼくを呼ぶ。「はい」と返事をしてその瞳を見つめる。暗い色をしたその虹彩は表情にも態度にも出さない彼の深い闇をあらわしているようだった。その闇にふれたい、ぼくはそんなことを考えながら彼の顔を注視しつづける。
「さっきの話は仲間としてのそれか?」
「いいえ」
「そうか。ではひとりの男として話をしよう」
「ぼくを対等に考えてくれるということですか?」
「最初からオレはおまえをオレと同等の人間だとおもっているし、他の仲間だってそうだ。オレはリーダーをやっているがおまえたちを下に見たことはない」
ああ、彼のこういうところだ。ぼくは彼のこういうまっすぐなところがとても好きだ。

「あなたを愛しくおもっています。ぼくでは駄目ですか」
「待て。おまえはまだ若い。同じことをナランチャにも言われたことがある。恋心を勘違いしているんじゃあないか?」
「ぼくは自分の感情を捉えちがえるほどバカじゃありません」
「それは遠回しにナランチャをバカにしているぞジョルノ」
そう言って彼は笑った。つられてぼくも笑う。
「ぼくはたしかに恋に関しては初心者です。正直言って初恋だ。あなたにそういうふうに言われても仕方がないとおもっています。けれどあなたの傍に居たいというおもいだけはきちんと受け取ってほしい。これは嘘偽りないきもちです」
「…こんなふうに真正面から告白を受けたのは久しぶりだな」
そう言って彼はすこしまぶたを伏せた。ブルネットの髪がさらりと重力に従って流れる。そして彼は顔をあげるとぼくの瞳をその闇を孕んだ瞳で見つめた。

「おまえのきもちに嘘がないのはわかった。オレはそれなりに人を見てきたし、本当と嘘を見分けることくらいはできるつもりだ。おまえの言っていることは本当だ。信じよう。そのうえでおまえに言いたいことがあるんだが聞いてもらえるか」
「もちろん」
「オレはおまえのきもちに応えることはできない。だがおまえには出来得るならずっと傍にいてもらいたいとおもっているし、支えてもらいたい。オレの弱さを見抜いたのはおまえがはじめてだ。だからおまえの夢を叶えるまで、おなじ方向へ進める間は共にありたいとおもう。だがこれはおまえのきもちをしってしまった以上随分身勝手なお願いだ。だからどうするかはジョルノ、おまえが決めてくれ」
「あなたの傍にいたいと言ったのはぼくだ。そのきもちはあなたのきもちがどうであれ変わりません。傍に置いてください。ただ、」
「ただ?」
「あなたの言い分はたしかにずるい。だからぼくはそれなりの代償を払っていただきたいとおもいます」
「おまえの代償は高くつきそうだな」
「そんなことありませんよ。ただぼくとくちづけをしてください」
「くちづけ…キスか?」
「はい」
「そんなものでいいのか?」
「ええ。かまいませんか?」
「キスひとつでおまえが傍にいてくれるなんてな。いいだろう、好きにしろ」
「では目を閉じていただけますか」
彼はなんでもないようにすぐに目を閉じた。黒いまつげが目のラインをふちどっている。ぼくは鼓動が速くなるのを感じながらそれを抑えるように彼の髪にふれた。そしてかきいだくようにして彼にキスをした。彼のくちびるはやわらかく湿っていて、たしかに生きていることを感じさせた。なぜだかひどく泣きそうだった。

そっと離れると彼は目をあけてかるく微笑んで見せた。その笑顔があまりにうつくしかったからぼくは今でもあの瞬間のことを忘れられずにいる。ブチャラティ、あなたはぼくにずっと傍に置いてやると言ってくれた。その言葉に偽りはなかった。死ぬまで、あなたはぼくが傍にいることをゆるしてくれた。ありがとう、このきもちがもうここにいないあなたに届きますように。そう願ってぼくは空を見上げた。






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