Kind | ナノ


Kind
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*エロ表現有

分かってた、分かってる。
どんなに身体を重ね、愛を囁き合おうとも、結局は違う船に乗っている。
おれとヤツの進む航路は目的地は同じで、時折交わることは有れど、辿る航路は違う。
会いたいときに会えるような距離にないことは、互いに船長だから仕方ない、と自分にそう言い聞かせる度に、腹の底から湧き上がるその感情に必死で蓋をした。
――――なんて、幼い子供じゃないんだから言えないさ。



今日も特にする事も無く暇を持て余していた(と言えば、キラーがそんなはずは無いだろう、とものすごく怒るかもしれないが)おれは、特にあてもなく昨日到着した(おれにとって刺激のない)つまらない島をうろついていた。
すると近くから聞き覚えのある声がおれの耳に飛び込んできた。

「じゃあペンギン、シャチと一緒にリストアップした医療品を揃えていつものようにしといてくれ」
「…分かりました、教育も、ですね」
「よく分かってるじゃねぇか…おれは本屋に行く、買い出しが終わったら今日は好きに過ごせ」

会話の声の主はハートの海賊団船長のトラファルガーと防寒帽を目深に被ったクルー……確かペンギンとかいう名前だったはずだ(クルー達の名前を聞いて、水族館みてぇだな、と印象に残ったからよく覚えている)。
シャボンディ以来、おれとトラファルガーは億越えルーキーの中でも(この場合は麦わらもココに含める)同じ“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を巡るライバルであると同時に、不思議な事に恋人という括りに当てはまる関係でもある。
これは以前トラファルガー本人から聞いた話だが、ハートの海賊団は島につくと食料や生活必需品の買い出しやその島などの情報収集の他に、毎回薬屋をハシゴして医療品を大量に買い込むらしい。
別にたくさん買い込むからといって、怪我とかでその消費がはやいのかと訊けば、そうでもないらしいのだが。毎回買うのにはいくつかの理由があるという。一つは、備えあれば憂いなしってやつ…、もう一つはもしもの時用にクルーが練習するんだと、ああ…あと使用期限が短いのとか、研究に使うとか。トラファルガーの船は医療設備が調っているからな。
まあそんな事はいい、問題はおれが今暇だという事だ。

「よお、トラファルガー」
「…ユースタス屋、この島に居たのか」
「ああ、昨日からな……退屈なんだ、酒でも飲まねぇか?」

案に甘い時間も下心に含めながらそう言えば、トラファルガーの視線はちらりと本屋とおれの顔を何度か往復した。

「別に構わねぇが、おれは本屋に行きてぇんだが…?」

普段おれ自身は本屋なんかにはあまり足を運ばない、本を全く読まないという訳ではない(むしろ興味があれば積極的に読む)が、本屋や図書館といったあの大量の本による妙な埃っぽさがなんか我慢ならねぇ。
ちなみにおれの船で一番本を持っているのは、キラーだ。アイツは本当にジャンルを問わずにポイポイ買ってきては読み耽り、知識を収集する…“殺戮武人”っていう通り名以外に、いつか“生き字引”にでもなるつもりなのか。
ああ、また話がそれたな。
とりあえず、おれはトラファルガーが暇潰しの相手をしてくれるのならば、普段自分からはあまり近寄りたくない本屋にだって埃っぽさを我慢してついて行ってやるし、邪魔だってしないさ。

「いいぜ、付き合ってくれんなら、どこでもついて行ってやる」

というわけで、今おれは本屋で分厚い医学書などを数冊購入したトラファルガーと安いホテルの一室で大量に買った酒(中味はそこそこ上等なやつ)を飲んでいる。おれもトラファルガーも酒には大概強い方だ、たまに故郷の海の酒に懐かしさからペース配分を間違えてしまうが……その辺は若気の至りということで勘弁してもらおう。
トラファルガーは買った本の表紙を刺青の入った指でなぞりながら、楽しそうに最近身近にあった事を話している。
なんでもクルーの一人が医学を学びたいと、コイツに教えを請いにきたらしく、飲み込みはまあ……悪くはないらしいけれど良くもないという。しかし熱心に取り組む姿が見ていて可愛いんだと……珍しく饒舌じゃあねぇか。
自分ンとこのクルーがかわいいのは分かったが、酔っぱらいってのは同じ話を延々と話し続けるからダメだ。
目の前におれが居るのに違うヤツの話なんかするなよ、だんだんとイライラしてくる。いや、普段あまりお目にかかることができない酔っぱらって少しふにゃふにゃなトラファルガーはかわいいんだけどな。

「おい、トラファルガー」
「ん〜、なに?ユースタス屋」

少し紅潮し潤んだ目元、加えて少し舌が回らなくなってきたトラファルガーに、少しイライラが治まった……アルコールの力は偉大だ。
こちらを向いたトラファルガーの頭を片手で引き寄せて、その唇をぺろっと舐めた。

「クルー自慢の惚気ばっかしてねぇで、おれの相手しろよ」
「っふ……なんだ、構ってほしいのか?案外かわいいんだなぁユースタス屋は」

ムスッとしているであろうおれの顔を見てケラケラ笑うトラファルガーは、仕方ねぇなぁ、と楽しそうに言ってから唇を寄せてきた。
ガキ扱いにはカチンときたが、相手してくれるならいいと思ったおれは、持っていた酒のボトルをサイドテーブルに置いてから、トラファルガーを今度は身体ごと引き寄せて腕の中に抱き込んだ。

「……甘えるにしては、悪戯がすぎてるぞユースタス屋」

トラファルガーがそういうのも無理はない、おれが脇腹を撫でながら、首筋に唇でちょっかいをかけるという名のセクハラを働いているからだ。

「ガキじゃあねぇんだ、此処へのキスの意味くらい分かるだろ?」
「……へぇ、欲望のキスか」
「…おれだって読書くらいはする…」

意外そうな反応をしたトラファルガーにそう言って今度は項に吸い付く。服の裾から直接無駄な肉の無い細い腰を触る。
あんまりしつこく腰を触っていたら、擽ったかったのか、焦れたのか……トラファルガーが向かい合わせになるように身を捩って、仕返しとばかりにおれの肩にかかっているコートを落とした。



「ふっ…んあ、音……や、だあっ」
「その割りには随分と気持ちよさそうだけど?」

なァ?と後ろから覆いかぶさり、ピアスのついた耳を舐めつつ、ぐちぐちと卑猥な水音をたてながら、おれはトラファルガーの中に埋め込んだ指をバラバラに動かす。
時折イイところにあたるのか、身を捩って悶える様を見て、ひどく興奮する。……焦らしているのは、もちろんわざとだ。

「…ゆっ、すた…や、」
「……なんだ?」
「も、それ、ふっ…やめ…しつこ…っあ!」
「へぇ…じゃあ、どうして欲しいんだよ?」

ぐちゅりとやらしい音をわざとたてながら、前立腺にはギリギリ触れないでいる自分は、我ながら意地の悪い事をしているという自覚はある、こうやって求められてないと安心できないとは……ずいぶんとまあ…女々しいというか、子供じみているというか。
きっとキラー辺りに話せば、キッドは図体ばかり大きくなった子供だからな……違いない、と言われるだろう。いや、おれだって一海賊団の船長だから、やる時ゃやるっての。

「このっく、そっ…キ……!じら、あっ!…な、」

頬は紅潮し、目に生理的な涙を浮かべたトラファルガーと目が合う。
やっべぇ、すっげぇキた。
思わず本能のままに、くるりとトラファルガーをひっくり返して、向き合うような体勢にした。

「〜〜〜っぁあっ!!」
「……っオイ、まだ挿れただけだぞ」

そう言って達しかけていたトラファルガーのモノの根元を手で締める。すると塞き止められて苦しいのか、トラファルガーはいやいやと首を振った。
せめて楽な体勢をとらせようと、トラファルガーの腕を自分の肩の方にまわしてやる。

「やぁっ…はな…てぇ、やめ…っふあぁ!」

なすがままにおれの肩や首に引っ掛かりながら、いやいやとなくトラファルガーを見ていたら、まただんだんと苛めたくなってきた…別に最初は意地悪をしている訳じゃ無かったんだけど(それにあんまりイかせると、いろいろともたないから)な、そりゃ結果的にトラファルガーにとっちゃ苦しいばっかりだから、意地悪かもしれねえが。

「…今我慢して一緒にイくのと、イきながらガンガン突かれるの……どっちがいい?」
「っふぁ、…そ、んなぁ!」

どっちがいい?と耳元で聞いたら、トラファルガーがおれのを締め付けるから、息が詰まった。
口ではそんなだとか、やだとか言ってるけど、身体は正直だよなぁ。

「……そうか、言わないなら仕方ねぇよな、じゃあいっその事ここ結んじまうか?」
「ん、ゃっ、やだぁ…〜〜っあぁ!!」

トラファルガーのモノから一旦手を離して、腰を引いてトラファルガーのイイところ――いわゆる前立腺を狙って打ちつける。

「ヤじゃねぇだろ?…っホラ、おれのをぎゅうぎゅう締め付けてる」
「〜っや、やらっ…そ、なの!っふあ……いう、なぁ!!っぁあ!」

さっきまでイきそうだったのを無理矢理塞き止めたから、今弱いところを突かれれば間違いなくまた絶頂へ導かれるだろう。
だけどおれは意地悪だから、イく寸前でまた止める。
今度はソコをボトルについていたリボンで飾ってやって、再び腰を揺らす。突き上げる度に過ぎた快楽に泣きながら喘ぐトラファルガーがかわいくてしょうがない、そう思うおれはもうどうしようもない。

「ひあっ、ゆ…すた、あ!…っも、くるし…っだしたぃ……!やぁっ」

おれの背中に爪を立てながら、いやいやと首を振るトラファルガーをさらに追い詰めるように、空いた手でツンとたった乳首に軽く爪を立てた。
するとトラファルガーが一際大きな喘ぎ声をあげておれのを締め付けたかと思えば、その腰はびくびくと跳ねていた。けれどリボンで飾られたトラファルガーのモノはまだ元気だった。

「っふ……、くん…ゆ、…はっ……ぅあ」
「……もしかして今出さずにイった?」

目尻から流れる涙を舌で掬い取りながら、そう訊ねればギロッと睨まれた……涙目だから別に恐くないけどな、寧ろ余計に燃えちまうというか、なんというか。

「…っは、の…クソ、タス!…っひあ!」
「なに終わった気でいるんだよ、おれはまだイってねぇぞ」

かわいそうだからリボンは解いてやってから、腰を押しつけて、トラファルガーの前を弄ってやると、かわいらしく喘ぎ始めた。



なんかもぞもぞする…と目を覚ましたら、寝る前にしっかりとおれの腕の中に抱き込んだトラファルガーが、逃れようとしてるみたいだった。
みたいっつうのは、おれがまだ目を閉じてるからなんだけど…、あんまりもぞもぞと必死に動くもんだから、寝たふりをしながらぎゅっと抱き締めておいた。
このクソガキめ…、と小さく悪態を吐いたトラファルガーの腰から尻にかけて一撫でしたら、さすがに殴られた。つか、クソガキって言われたの2回目…。

「うひゃあ!?…ユースタス屋、起きてんだろ!」
「起きてませんー」
「ぅあ!…てめっ、イタズラすんな!」

おれはぱかっと目を開けて、ニヤリと笑って言ってやった。





「おれはクソガキらしいからなぁ?」
(さみしいなんて恥ずかしくて言えねぇけど)
(これくらいはいいだろ?)

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120622