心配 | ナノ


anxiety Side:Y
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いつどうしようもなく不安なのだ。
以前の佐助は俺より年暈だったが、今生では俺と比べて一回りも年下でまだ5歳だというのに、なんだか俺に縛り付けているような気がして。
だがその思いとは裏腹に、誰にもとられたくないという浅ましい感情がこの胸をどろりと渦巻くのだ。



それは部活に試合にとものすごく忙しかった長い夏も終わり、スポーツの秋を体現するかの如く、真っ赤な蜻蛉が夕空を舞始めた頃の事だった。

「申し訳ありませぬ、…このような某の個人的用事に突き合わせてしまって…」
「いや別にかまわない、丁度私もあの店に用事があったのだからそのついでだ……それにしても、」
「?」

お前は相変わらずというか、律儀なヤツだな、そう言って少し前に居た彼女は立ち止まってこちらに振り向いた。

「……そのプレゼントの相手は羨ましいな、真っ直ぐお前に愛されて」
「……そうでござるか?」
「ああ」

そう応えた彼女の瞳は随分と遠くを見ている。恐らくは、生まれる前の過去を。
彼女もまたかつての俺と同じで、探しているのだ、自分の想い人を。

「…あぁ、今も昔もお前のその生きざまにはとても好感が持てるぞ」
「なっ…、某は女子(おなご)は今も苦手な方でござるが、孫…さやか殿のそのさっぱりした考え方は好きでござる」
「……慣れないなら、孫市でもかまわない、私が私と認識できれば問題ない……どうせ同じだ」
「そうでござるか…、そのお心遣いに感謝する…では孫市殿と、某はそう呼ばせてもらいまする、」
「ああ、…!」

孫市が突然片眉を上げた。
俺の後ろに何かあるのだろうか…?

「どうしたのでござるか、孫市殿?」
「いや、随分と小さいが…あれはお前のところの忍じゃなかったか?」

つい、と視線と共に指された指の先には買い物袋を下げた佐助がかなりの速度で走っていた。
こちらに背を向けて、脇目もふらずひた走るその様は、今生で再会したときを彷彿とさせる。

「(あれでは、また転けてしまう)……」
「おい真田、追い掛けなくていいのか?」

あいつ、泣いてたぞ。
呆れたような目で孫市殿がこちらを見るものだから、俺は慌てた。

「っすまぬ、孫市殿!」
「私の事はいいから、早く行ってやれ」
「承知!!」

そして、大きな一歩を踏み出しおれは風になる。





(年上の余裕なんて無い)
俺は不安で仕方ないのだ
(彼の未来を奪ってないのかとか)
(俺の気持ちを押しつけてないのかと)

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Remake:120501