それいけお殿様 | ナノ


それいけお殿様
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快晴、本日も絶好の脱走日和。
書類事務といういかにも殿様らしい仕事をしていた政宗は、明かり取りから空を見て勢い良く立ち上がり辺りの気配を探った。
仕事はまだ残っているが、そんな事気にしてなんかいられるものか。
硯を手早く片付け、軽く武装してニヤリと不敵に笑う。
さあ、今日も周りを巻き込んだ楽しい脱走劇を始めようではないか。

「Coolに行くぜ、…小十郎!」

此処には居ない腹心に一方的に挑戦状を叩きつけつかのようにスパン、と障子を派手に開けて政宗は廊下を駆け出した。
この時間帯の小十郎は、大好きな菜園に行っているから城を出るまでは堂々と歩ける。
今日こそは、果たしてみせるぜ!!と政宗は意気込む。



一方こちらは小十郎が世話をする片倉菜園。
手入れ作業をしていた小十郎は、ふと顔を上げ城の方を見て、真顔で呟いた。

「たった今政宗様が仕事を放って脱走した…ような気がする」

事実政宗はその時城の廊下を悠々と歩いて、派手に装飾した愛馬のいる厩へ向かっていた。
実に恐ろしい勘…というか察知能力である。
けれどそんな事を小十郎が知るはずも無く、再び作業に戻った。
幸いな事にこの片倉菜園は、城下町に行くときも、甲斐に行くときにも必ず通らねばならない道に面しているため、政宗が脱走したのならば此処で待ち伏せる事が出来る。
小十郎は先ほど感じた予感が現実にならぬよう祈りつつ、畑にはびこる雑草をむしった。
ダカッダカッダカッ
しばらくすると政宗の走らせる馬威駆の足音が、小十郎の耳に届いた。
城の方を見やれば砂煙の中に、蒼の陣羽織が風に舞ってはためいている。

(……毎回思うのだが、何故政宗様は手綱を持たれないのだろうか…アレでは危険だと言うのに、何度進言しても改められようとはされない……何故だ)

政宗を乗せた馬威駆がどんどんこちらに近づいてきているのを見て、小十郎はあわてて止めにかかった。

「政宗様っ!!」
「Ah?どうした小十郎?」

小十郎が道の真ん中に出てきたので、政宗は馬威駆を止めて、一体何だ?とばかりに口を開く。

「どちらに行かれるので?」
「Ahー…I go a little to there……ちょっとそこまで行くだけだ」
「……執務は全て終えられたので?」

ここで政宗の目が一瞬泳いだ、そのかわりに小十郎の目が鋭く光る。

「政 宗 様 ? 執 務 は ?」
「…もちろんやったぜ?何なら確認してもかまわねぇ?」
「そう言って小十郎が確認する間に、行くのでしょう?」
「Can't such、お前が帰って来るまで此処でちゃんと待つぜ、だからHurry up小十郎!」

小十郎はため息をついて「きちんとお待ち下されよ、政宗様」と城へと駆けていった。
政宗はそれを見ながら

「…ばーか」

と小さく呟いた。
さて、しばらくしてから小十郎が血相を変えて駆け戻ってきた。
小十郎が駆けることで生まれた土埃を見た政宗はニヤリと笑って、馬威駆に飛び乗った。

「Hey!小十郎!!俺ァちょっと甲斐まで行ってくる!!」
「政宗様ぁぁぁあ!!!確かにやっておりましたが、何故あと1枚、しかも期限が今日のものを終わらせておられないのですか!!…っあと、甲斐は“ちょっと”で行ける土地ではありませぬぞ!!」

小十郎の声は次第に大きくなっていく、政宗は楽しくてしかたないというようにニコニコと笑っている。

「Ha!Here we go!!」

政宗が馬を走らせ始めた、その後ろで小十郎が「お戻りくだされっ、政宗様ぁぁあ!!」と叫ぶのが政宗の耳に届いた。

「お前が俺を相手しねぇのが悪いぜ、My daring?」


お前が構ってくれるなら

(Hey真田ー!手合わせしようぜ!!)
(おお!政宗殿!少々お待ち下されー!)
(竜の旦那ぁ、準備できるまでお茶飲む?)
(Ah、貰う)

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上田は政宗の駆け込み寺(笑)
120211