話しは何日か前に遡る。アイツが俺を初めて褒めた反吐がでそうな日。

昼下がりのファウード。内部に潜む魔物とパートナーは戦いに残った強者ばかり。戦いに慣れたもの、戦いを楽しむもの、協力してきて勝利を得たもの、戦闘能力に長けたものと様々。
しかし、このファウードにいる魔物とパートナーはある利害のもとで動くものしかいない。

【そう、ファウードを利用して魔界の王になる】
だがその目的を持たずにいる魔物とパートナーがいる。それはリオウの呪印が額にあるパートナーとそのペア。

間違ってるなんて思ったことはない
純粋にみてみたいと思っただけ
だけどアイツはそれを最初から拒絶していた。自分の命さえも捨てても良いと魔物に向かって盾を突いた。

バカな人間だ。
ほんとクソッタレな野郎。


「ザルチム、今日は頼まれてくれ。お前じゃなきゃどうしようもない」

「……仕方ねぇな。人手も足りねえしお前の頼みだリオウ。」

「ザルチム、ありがとう。」

リオウの頼みごとでもやりたくない案件だった。けれど、今日のファウードの人手は異常に少ない。ファウードの準備期間に体調を崩すパートナーや魔物や新たな力を探して外にいくペアも多かった。だからこんな。

まあ仕方ねえ。

「アリシエ」

外へ出掛ける準備をしていたアリシエにザルチムは声をかけた。今日はファウードの外に買出しに2人で行く。
ほんと、コイツとは極力一緒にはいたくないが、リオウの頼みだ。そして今日はコイツのパートナーのリーヤはファウード内でぶっ倒れるパートナーたちの介抱とか料理作りとか雑用の当番で、ふたりきり。

いやな組み合わせ。

「はやく行くぞ」

アリシエは普段穏やかな性格らしい。しかしザルチムの前では完全に敵意丸出しな表情や口調だった。それもそのはず
コイツの大切な村の子を傷つけようとしたのだから。

2人は黙々と歩きながら道なりができないけもの道を歩いていた。ファウードをかくしている段階だからすぐに知られないような場所にある。だからこそ動ける男手は重要でアリシエはリオウの呪印はあるが想像以上に働く強者だった。

買い物をしてファウードの帰路を始終無言で歩く2人。もうカンカンに暑い日差しはすっかりと西に傾いてオレンジ色に空が照っている。
さすがに1日買出しは疲れたのかアリシエは大木の日陰に荷物を置いて座り出した。
(やっぱり人間だ。体力がねえ。まあコイツのタフさは人間の中でも群を抜いてるがな)

汗ばんだ額を手で拭いふぅと一息ついて水筒の水を飲むアリシエ。チッと舌打ちしてザルチムも日陰に向かった。なんだかんだで疲れたのも事実。

そばに寄ると思いの外アリシエは優しく声をかけてくれて。

「ザルチム、お前も疲れただろう。少し休んでから帰ろう」

差し出してきた飲みかけの水筒。コイツほんとよくわからねえと思いながら差し出された水筒の水を飲んだ。

「リーヤだったらこんなに歩いたらダウンだ。だから今日はお前とペアで良かったのかもな。」

珍しく話しかけてきて穏やかな表情で景色をみて呟くアリシエに何故か見とれてしまい目がそらせなかった。

あの日からずっと。ずっと変わらない。

「ラウシンも珍しく風邪でダウンしてるらしいな。大丈夫そうか?」

「あ、ああ。ラウシンが頼んだ果物も買えたからはやく帰って食べさせるさ。お前が心配することじゃねえ」

「へえ。ラウシンには優しいんだな。お前もパートナー思いなんだと知れて嬉しいな」

そう言っていつもリーヤに向ける笑顔で笑うからびっくりしすぎて目を見開いてしまった。優しいお兄ちゃん。まさにその言葉がぴったりだった。
びっくりして目を見開くザルチムをじっとみるアリシエはまた笑う。

「気付かなかった。お前の目は透き通るほど綺麗なんだな。夕焼けのオレンジを全部吸い込んだみたいでキラキラしてる。さあ、長話しすぎたな。そろそろ帰ろうか」

俺の動揺も知らずアリシエは歩き出す。バカみてえに動揺して心臓が歩いてる時以上にバクバクして止まらない。

意味がわからねえ。
何なんだ。ほんと。
コイツに振り回されてばかり、だ


「ザルチム、すまないな」

風邪をひいて横になっていたラウシンは帰ってきたザルチムに声をかけた。


「どうしたんだ?俺より熱があるんじゃないか?」

ラウシンの言葉にまた動揺して声もでないザルチムがそこにいた。

おわり


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