2人での初任務
イタリア南部にあるミルフィオーレのアジト。
小さいアジトだが、油断は出来ない。
「いいか。俺が合図したら出るぞ」
「了解でーす」
カエルが返事したのを確認し、アジトの様子を茂みの中から伺う。
「1…2…20人くらいか」
「ですねー」
「しし、お前やる気あんの?」
「失礼な。やる気満々ですよー」
ホント変なヤツ。
まぁ、いっか。
「行くぞ!」
「ラジャー」
俺達は一気に茂みから飛び出る。
そして、そのままアジトに襲撃開始。
外にいた20人程の他、アジトの中から更に15人くらい出てきた。
「ししっ、暴れ甲斐あんじゃん♪」
「なっ…お前等は…ヴァリアー!?」
「ご名答ですー。でもさようならー」
俺達は次々と敵を倒して行く。
コイツ等は人数がいただけで、実力は大したこと無かった。
匣すら使わずに勝てた。
「ちっ…大したこと無かったな」
「ですねー。楽な仕事でしたー」
これじゃあ勝てて当たり前過ぎてこのカエルの実力が測れない。
「ベルセンパイ?」
「あ?」
「黙り込んじゃって、どうかしたんですかー?」
「別に…何でもねーよ。ホラ、任務完了したんだから帰んぞ」
「はーい」
俺はヴァリアーのアジトに帰るため、くるりと踵を返した。
そしてそのまま歩き出す。
「あ、ベルセンパイ!」
「あぁ?何だよ…」
カエルの声が聞こえ、後ろを振り向くと…
「え…?」
俺の上に倒れ込んでくる体。
一瞬、頭の中が真っ白になる。
「カエ、ル…?」
倒れ込んで来たのはカエルだった。
背中には、大きな槍が2本。
貫通しているようだった。
「な…なんだよ、コレ…」
まだ敵がいたのか?
というか何故コイツが倒れてる?
コイツは俺の名前を呼んで―…
(もしかして、俺を庇った…?)
ドクンドクンと胸が締め付けられる。
また…
また死ぬのか?
マーモンのように…
まだヴァリアーに来たばっかじゃんか…
「っ…あ゛…あばぁぁぁぁあ!!!」
俺は無意識にナイフを投げ続けた。
ザクザクッと音がして、敵の断末魔が聞こえる。
「はぁっ…はっ…」
敵を始末し終え、俺はカエルの元に向かう。
「馬鹿なカエル…俺を庇ったりするから…」
「あー、痛いですねー…」
……………は?
コイツ今しゃべっ…
「おいっ…おま…」
「あぁ、ベルセンパーイ。大丈夫ですかー?」
ケロッとしているカエル。
俺はコイツの背中にに刺さっている槍を見た。
…確かに刺さってる。
「お前っ…どうして…」
「あー、ビックリしましたー?ミー、こんなものが刺さったぐらいじゃ死なないんですよー」
そう言いながら、ズボッと背中に刺さっていた槍を引き抜いた。
その槍には血が一滴も付いていなくて、コイツの体からも血は一滴も流れていなかった。
「な…な…」
「?どうしたんですかー?ベルセンパ…ゲロッ!」
コイツを心配してやったのが馬鹿馬鹿しくなって、思いっきり背中を蹴飛ばしてやった。
あー、ホントコイツムカつく!
「ベルセンパーイ、ごめんなさいってばー」
「うるせっ!ホラ、帰んぞ!」
「はーい」
イライラしつつも、コイツが死ななくてホッとした。
…何故だかは、わからないけれど。
(成る程…コイツは死なないのか)
確かに、霧の術者としてはいい腕を持っているかもしれない。
と考えながら、俺達はヴァリアーのアジトに向かった。