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ずっと前から好きだった





あなたは知らない。でも私は知ってる。
過去も、そして未来に起こることも全て。


眩しい青空にとろけそうな雲。
そこに流れるは我らが船長の好きな唄。
ちゃんとした五線譜を無視して演奏するクルー達に、ヨーキは満足そうに笑っている。

あ、ヨーキ見てたらずれちゃった…。

慌てて元に戻すと二階のデッキから私の名前を響かせた。




「今、半音ずれてたろ」

「うわ、バレてるし…ッ」

「おれが気付かねェと思ってんのか?」




見上げれば頬杖をついてニヤリと笑っているヨーキと目が合う。
青空と太陽のコントラストに照らされてキラキラ光る髪に見とれてしまった。
…カッコいい、だなんて絶対言ってやらない。
ヴァイオリンを奏でる手が少しだけ震えるけれど、それを誤魔化すように強く握る。


それを知ってか知らずか、また満足そうに微笑む彼を見て自然と体温が上がっていく。
まわりに居るブルックさんはピアノを、仲間達はそれぞれ金管や木管を奏でていて。
楽器の出来ない人は唄ったり踊ったり、音楽を体で楽しむ。
音楽を愛する私達は、泣く子も笑うルンバー海賊団。


───これから起こる事なんて、誰かの見た悪夢なんじゃないかと思うくらい平和な毎日。


違う世界からやってきた私を受け入れてくれた仲間。
そして、愛してくれる大切な人。
私の守りたい宝物達は今もキラキラと輝いている。



「何ぼーっとしてんだよ?」

「へ?うわ、ヨーキ!」



いつの間にか隣にいた恋人に驚けば彼はニカッと笑って「んなに驚かせたか?」と頭を撫でてくれた。
私を撫でているヨーキを見ると、その目は愛おしそうで。
人に愛されるってこんなにもしあわせなのだと感じる。



「で、何考えてたんだ?」

「え?」

「お前、全部音に出るから分かりやすいんだよ」



両頬を大きな手で包まれて、ぐいっと顔を合わされた。
色素の薄い茶色の瞳に吸い込まれそう。
……いっそ吸い込まれたら一緒にいられるのかな、なんて。



「もし」

「ん?」



私から出た言葉は上手く空気を振動させる事が出来なくて少し掠れていた。
それでもヨーキは優しく聞き返してくれるから、胸がきゅんと痛くなる。



「もし、この先何があっても……私の事を好きでいてくれる?」



ヨーキの瞳を見つめてそう言えば、その瞳は一瞬驚きに揺らいですぐにいつもの力強い眼差しに戻った。
そしてお日様の笑顔が輝いて、それと同時に赤いピアスもキラリと光る。



「当たり前だろ?お前は心配し過ぎなんだよ」



何があっても傍にいてやるから安心しろ、なんて言いながら私を抱きしめた。
その力はいつもよりも強くて少し苦しいけれど、その暖かさに安心してるのは本当で。


漫画という紙の中の登場人物のひとり。
想いも伝えられなければ、触ることすら出来ない。
けれど、その中に居るあなたを好きになったの。
音楽を、仲間を想って別れを告げたあなたを助けたくて私はこの世界に来たの。

…こんな事言ったらあなたはなんて思うかな…?





「ねぇ、ヨーキ。私ね……、」
















ずっと前から好きだった

(あなたの知らないずっと前から)
(そう言ってあなたにキスをしたら、もっと深いキスがかえってきた)









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