群青は見つからない (7/7)


先程まで寝ていた男が煙草をふかしている。すんすんとその匂いを吸い込むけれどあの時の匂いとはやっぱり違っていてまたアテが外れたかと苦い気持ちになった。

事後の虚無感なのか、やはりあの男の代わりになる何かなど存在しないことを再確認したからなのか気だるい気持ちになって男の煙草に手を出して火を点けた。

幾度も同じ匂いを探して歩き回って来たけれど名前くらいしか知らないんじゃあ話にならない。
容姿なんて年を取れば変わってしまうし生きてるかどうかすら分からない。

今思えば何でも知ったような顔をしていたけれど何にも分かっちゃいなかったあの時の私は、どうしてあんなにか彼を信じきっていたのだろうか。なんにも分かっちゃいないのに。

彼だって何にも知らないただの少年であっただろうに。

どんなに大人びていても少年だ。少年は少年という生き物だ。

それなのに今でも私は彼のことを信じている。彼の何を信じているというのか分からないがただ漠然と。

すっかり大人になってしまったと、完全に熱が引いてしまった私の心などいざ知らず煙草を吸い終えた男は素肌に指を這わせてきた。

先程まで熱い情を交わしていたというのにその手付きが妙に不快で鳥肌が立った。
シャワーを浴びてきて、汗が嫌なの。と告げると男は渋々浴室へ向かっていく。

これまで何人もあの時嗅いだ匂いと同じ煙草を吸う男と付き合ってきたけれど渇望は満たされず更に乾いていくだけで一つも上手くは行かなかった。

この人も潮時かもしれない。

決して彼等が悪い訳じゃないのだ。私が悪い。どうしたって探し当てられる訳もないのに諦められない私が悪いのだ。



結局私は浴室で汗を流す男を置いて部屋を出た。もう戻る気も無かった。

繁華街のネオンを横目に歩いて誰に伝えるでもなく、逢いたい、と呟いた。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -