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いざ、野球部へ





小さいころから野球が大好きだった。だけど女子が野球をするには限界がある。だから、せめて野球をやってる人達を近くで見守りたいと思ったんだ。







四月。
ここ西浦高校では、新入生を勧誘するためいくつもの部活動が正門から校舎にかけてズラリと並んで、声を出し呼びかけあっていた。そんな中、どこの部活にも見向きもせずただひたすらにある場所へ向かって行く人物がいた。名字名前である。彼女は入学前に何度か訪れた野球部のグラウンドまで早足で向かった。

「あれ、」

名前がグラウンドの近くへ歩いて行くと、ジャージ姿の女の子が一人オロオロしているのが目に入った。一体誰だろう、自分と同じマネージャー志望の子だろうか。そんな事を考えながら足を進めると、次第にその子がはっきりと視界に映った。


「千代ちゃん!」

そこには中学時代とても仲の良かった篠岡千代がいた。篠岡も名前に気がついたのか笑顔で手を振っている


「千代ちゃんどうしたの?マネジ志望?」
「そうなの!でも…か、監督が…」

そう言ってチラリとグラウンドを見る篠岡。その視線につられてグラウンドを見るとちょうど監督が甘夏を素手で握り潰していたところだった。


「うわ……ま、でも大丈夫でしょ。さ、行こ」
「えっ、ちょっと名前ちゃん!?」

篠岡の言葉を無視して名前はずいずいと歩き出す。勿論手を引かれている篠岡もグラウンドに入って行くことになるわけで、そんな異様な光景にグラウンドにいた数人の部員が視線を向けた。


「あの…」

しばらく歩いて監督の近くで止まると、名前は篠岡の手を離し、監督に話しかけた。

「私達に…マネジやらせてください」
「わっ、2人も来てくれたの?嬉しい!一緒に頑張りましょ」

にっこりと笑い、2人の手をとった。その監督の笑顔に応えながら名前は辺りを見回すと、すかさずわらわらと部員が集まって来るのが見えた。


「なになに!?マネジ志望の子?」

背の小さいやたら元気な男の子がピョンと跳び跳ねてこちらへ来た。

「俺、田島悠一郎!よろしくな!」

ニカッと笑い、手を握ってきたその子はそう名乗った。

「私、名字名前といいます。よろしくお願いします」
「あ、私篠岡千代ですよろしくお願いします」

2人で頭を下げると、頭上から聞き慣れた声がした。


「なに篠岡まで引っ張ってきてんの?」
「あ、隆也…違うよ千代ちゃんもマネジ志望でここまで来てたの」

篠岡と出会った場所…フェンスの向こう側を指差せば、阿部はチラリと見て「ふぅん」と呟いた。すると、花井と栄口がその阿部の横に立ち、名前達を交互に見た。

「お前らマネジやんのか」
「2人とも中学ん時野球好きだって言ってたもんねぇ」

同中の栄口や同じクラスの花井はもともと知っている人だからなのか、そこまで動揺もせず、普通に話しかけてきた。それから色々とたくさんの人に質問攻めにあったが、監督がその場を抑えてくれた。

「おしゃべりはそのくらいにして、さ!今度合宿するからね!そのつもりで!」

そう言って、その場は解散となった。いよいよマネージャーとしての仕事が始まる。名前はしっかりと意識を固め、明日からの活動に備えて準備を進めた。







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