20万打 | ナノ
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こんなに眠れなかった夜は、いつぶりだろうかと名前はぼんやりと明るくなっていく空を布団の上で眺めていた。銀時を拒絶してからずっと、毛布を手繰り寄せる気力すら出ずそのまま布団の上に横になって丸くなっている。

「……」

この時間帯は本当に静かだ。ここ最近色んな事が起こりすぎて頭の中を整理するにはもってこいではあるのだが、今の名前にとってこの静寂は逆に苦痛でしかなかった。五島を始め、銀時との出来事がフラッシュバックして体が勝手に震える。そんな状態が何時間も続いていたが暁の空を迎えた今ようやく、少しだけ落ち着きを取り戻した。

「…もうすぐみんな起きてくるよね…私も起きないと」

そう呟いて名前は腕に力を入れた。自らの甘さで負った怪我のせいでニ週間以上も救護班の方に顔を出していないのだから、もうこれ以上は穴を開けるわけにはいかないと己を奮い立たせるが、体がどうにも言う事を聞いてくれない。何度か踏ん張ってみたのだが腕に体を支えるだけの力が入らず、上半身を起き上がらせるだけで精一杯だった。おそらく一睡もしていないから、という理由だけではないだろう。精神的にもダメージを受け過ぎて、身体が悲鳴を上げているのだ。

「…どう、しよう」

このまま部屋から出なかったら誰かしら不審に思って呼びに来るだろうが、その場合必ず何かあったのかと尋ねられるだろう。そこで素直に昨晩の出来事を話すのは気が引けるし、名前としては誰にも知られる事なく闇に葬り去りたい。名前は、再び布団へ突っ伏した。深く息を吐き、かたく目を閉じる。
起き上がらなくては。でも五島と顔を合わせてしまったらどうする?銀時とも必ず言葉を交わさなければならない時がくるだろう。でも、医療班が全滅した今隊士達にも迷惑をかけているしこれ以上甘えるわけにはいかない。そんな思いが頭の中をぐるぐると巡って名前は眉を顰めた。そんな時だ。

「名前、起きているか」
「…!」

襖一枚隔てたところから声をかけられた。いつもなら気配を察する事が出来る筈なのに、今の状態ではそれすらも出来なくなっているらしい。

「…今起きたところよ。どうしたの、小太郎」
「なに、今日辺りから医療班に復帰すると言っていたのを思い出してな。様子を見に来ただけだ」
「…そう」
「入ってもいいか?」
「……」
「…名前?」

気持ちの整理がつかず言葉を詰まらせていると、黙ったままの名前を不思議に思った桂が、襖に手をかけた。それに気付いた名前は慌てて声を上げる。

「だっ、だめ」
「?」
「今、着替え中だから…」
「…そうか、では俺は先に行ってるぞ。後で一度こちらには顔を出すのだろう?お前が療養中一度も顔を見てない奴だっているからな、皆心配しているぞ」
「うん…ごめん」
「謝るな」
「…ありがとう」

なんとか声を絞り出して会話を終わらせた後、桂の気配が消えたのを確認してから名前は深く息を吐いて脱力した。桂に会うだけでも一大決心をしなければならないというのに、その他大勢の隊士達にも顔を出さなくてはならなくなってしまった。しかし心配や迷惑を散々かけてしまった身なのでそう文句は言えない。

「…甘えるのはもうだめ」

そう自分に鞭打って、名前はようやく布団から這い上がった。殆ど気力で起き上がったに近い。
そうして身支度を整え、部屋を出て一番初めに向かったのは救護所だった。負傷兵が負傷兵を手当てしているという現状を少しでも打破しなければと、名前は周りを異常な程警戒しながら歩いた。途中、何度か隊士達に呼び止められ復帰を祝う声や優しい言葉をかけられたが、快然たる気持ちで接する事は出来ず当たり障りのない返事をし、逃げるように足を進めてしまった。



「あっ、名字さん!」

救護所へ足を踏み入れてすぐ、いの一番に名前に気が付いた隊士の一人が大きく名を呼んだ。それによってその場にいた大勢が一斉に名前へ視線を向ける。

「大丈夫なんですか!?」
「心配しましたよ!」
「傷はもう平気なのか?」

若い隊士を皮切りに、動ける隊士達がワッと名前に駆け寄ってきた。主に銀時達とそんなに歳が変わらない隊士だが、ちらほらと父親のように慕っている人達も駆け寄って来てくれていて、名前は少しだけ笑顔を零した。

「傷は取り敢えず動けるまでには回復しました。まだちょっと様子を見ながらの生活にはなりますが、これ以上サボってもいられないので。本当にご迷惑をおかけしました」
「迷惑なんて誰も思ってねぇよ。名字、お前が無事で良かった」
「そうですよ、名字さんの活躍はみんな知ってますから!」
「ありがとう…」

そうしてその場にしばらく滞在し、名前は次によく関わり合いになる隊士達だけにでも顔を出しておこうと、集まっているであろう場所に向かった。そう言えば高杉にもしばらく会っていないな、などと考えながら角を曲がった途端、正面からよく知る人物が歩いてくるのが見えて、名前は足を止めた。見間違う筈のない銀髪、坂田銀時だ。

「…あ」
「……」

なにやら思いつめた表情をしていた銀時だったが、名前の姿を認識した途端、銀時も足を止めた。二人の間に気まずい雰囲気が漂う。

「…名前、」
「っ…」

沈黙を破ったのは銀時の方だった。遠慮がちに名を呼び一歩前へ出た途端、名前は急に俯き、一定の距離を保とうと後退りする。そこで銀時は確信した。それが彼女の答えなのだと。わかっていた筈なのに憂慮していた事が確信に変わって、銀時は踏み出した足を元の位置へと引っ込める事しか出来なかった。次に続ける言葉が見つからず、ただただ俯く名前を見つめていると徐に彼女の方から歩き出し、避けるように横を通り過ぎて行った。そんな彼女の姿をまともに見る事が出来ず、名前の去って行く音だけを銀時は苦しそうに聞いていた。

「……嫌われて、当然か」

思わず零した科白が、その場に虚しく浮かんだ。



それから一週間ほど経った。約三週間ぶりに復帰した筈の名前だったが、なぜか日に日に窶れ、衰弱しているように見受けられた。それは誰の目から見ても明らかで、幼い頃から何かと名前を気にかけてきた桂達も勿論気が付いていた。しかしその原因に桂達を含め皆心当たりがなく、まだ実は傷が痛むのではないか、一人だけ生き残ってしまった事を未だに気にしているのではないか、など色んな考えが飛び交い、謎は深まるばかりだ。だがこのまま名前の様子がおかしいままでは困るのも確か。名前の事が心配だというのも勿論あるが、的確に素早く治療の出来る人物が名前一人になってしまった今、どんな事をしてでも完全復活を遂げて欲しいというのが皆の思いだった。以上の事から名前と付き合いが長く、尚且つ彼女に探りを入れるなどという無理なお願いをし易い桂に白羽の矢が立つのは容易に想像できた。案の定何人もの隊士から毎日のように頼み込まれる桂だったが、初めのうちは自分が問うても名前は口を割らないだろうと動く事はなかった。しかし「銀時の方が適役だ」と零す度に「もう既に掛け合ったが、強く断られた」と返ってくる。桂は遂に業を煮やして名前の元へ向かった。

「…名前、ちょっといいか」
「っ、小太郎…どうしたの」

救護所へ赴き、隊士達の治療にあたっている名前に背後から呼びかけると、一瞬体を強張らせた名前が振り返った。少しだけ怯えたような表情だった事を不思議に思いながら、桂は敢えて触れずに話を続けた。

「いや…少し外に出ないか?」
「いいけど…あまり長くはここを空けられないから…」
「ああ、ほんの少しでいい」
「わかった」

桂の真剣な表情に負けて、名前は器具を置いて立ち上がった。

「名前、俺が今何を聞こうとしているかわかっているのだろう」

襖を閉めて少し歩いた所で、桂は立ち止まった。後ろに続いていた名前も足を止め、桂を見上げる。

「……」
「無言は肯定と受け取るからな」
「…何でもないから、大丈夫」
「そうやって隠した所で何も変わらんだろう」
「ごめん、みんなにはこれ以上迷惑かけないようにするから…」
「そうではない。皆、お前の事が心配なのだ。折角瀕死の重傷を負ったお前が復活して殆どの者がホッとしたというのに…何故だ。まだ傷が痛むのか?」
「違う」
「ならば、」
「小太郎。お願い…大丈夫だから何も聞かないで」
「しかし名前」
「小太郎の事が信用出来ないとかそういうわけではないの。だけど…ごめんなさい、この事は自分でどうにかするしかないから」
「わかった…だが無理はするなよ」
「ありがとう」

流石は桂というべきか。無理に踏み込む事はせず、しかし見放すわけでもない桂の優しさに名前は心から感謝した。

「じゃあ…私戻るから」
「あぁ」

桂が頷いたところを確認して、名前は静かに踵を返す。やがて部屋の中へと消えていった名前を見届けた後、桂も自分の持ち場へ戻った。




救護班に復帰してからというもの、名前は休んでいた分を取り戻すかのように日々体を酷使していた。治療は勿論のこと、包帯作りや薬作り、それらの管理などとにかく名前が中心となり行った。しかしこれが日々窶れていく原因では無い。それは、きちんと毎日眠れていないことにあった。男性と接する事に少なからず恐怖を抱きながらも日中は隊士達に尽くし、夜に五島との出来事が蘇ってどうしようも無い不安と恐怖で泣く日々が続いているのだ。
そして数日後、遂に恐れていた事が起こった。五島が救護所に現れたのだ。軽い切り傷が数箇所ある程度だったが、勿論五島は名前を指名してきた。今のこの男にそこまでの権力は無いのだが、彼女が拒める筈が無い事を知っている五島にとってはどうでもいいことだった。

「どうした、名字。早く来い」

恐怖で口がきけなくなり、体が石のように動けなくなっている名前に対して少々苛ついた様子の五島。それを見てこのままではまた無理矢理襲われるかもしれないと、更なる恐怖心が名前の体を蝕み、急激に吐き気と震えが襲ってきた。

「名前、どうした」
「っ…ぁ、しん、す…」
「…来い」

そこに偶々現れたのは高杉だった。救護所に足を踏み入れた途端妙な雰囲気に包まれ、何事かと辺りを見渡せば、酷い顔色の名前が五島を前にして怯えているのが目に映った。これはただ事では無いと、高杉は彼女に声をかけるがそれでも腰を上げようとしない名前。高杉はやけに楽しそうな五島を一瞥してから名前の腕を掴み、無理矢理外へ連れ出した。

元々桂から名前の様子がおかしいとは聞いていた為、良い機会だと高杉はそのまま名前の部屋まで連れて来た。一向に顔色が良くなる様子がない名前をゆっくり部屋の真ん中に座らせ、適当な場所に高杉も腰を下ろす。

「…何があった」
「……」
「まぁ、五島を目の前にしてあの怯え様ってこたァ五島と何かあったと考えるのが妥当だな」
「…小太郎が何か喋った…?」
「いや。自分でどうにかするって言われたから見守ることしかできん、とだけ俺に言ってきた」
「…そう」
「俺にもそう言ってはぐらかすつもりか」
「は、はぐらかしてるわけじゃなくて…ごめん、心配してくれてるのに…」
「そう思うんなら話せ」
「ごめんなさい…時間が経てばどうにか立ち直れると思うから…」

自分の着物を力一杯握り締め、震えながら頭を下げる名前に高杉も何も言えなくなってしまった。頼ってはもらえないのかと苛立つ気持ちも無くはないが、今はこれ以上深入りしても名前が辛いだけだと、そう己に言い聞かせた。

「…銀時は知ってんのか」
「……、」
「まさかアイツまで関わって…」
「っ…や、そうじゃなくて…」

銀時の名を出した途端、名前の表情がまた一段と固くなったのを高杉は見逃さなかった。慌てて否定しているが、表情や声音は完璧に誤魔化しきれていない為、銀時とも何かあったのは明白だ。銀時も名前に何かやってしまったのか、もしくは五島が何かやらかしている場面を目撃したのか。その辺りをもっと明確なものにしたいのに、更に口を固く閉ざしている名前を見、高杉は仕方なく追及を諦めた。





その後、いよいよ銀時達が中心となって戦う事が多くなってきた。五島との一件からはそろそろ一ヶ月が経とうとしていて、名前も大分落ち着いてきている。あれから容態が悪化しなかったのは、一番心配していたであろう三人が理由はどうあれ無理に詮索せず、見守ってくれた事もあるが、なにより五島が戦死したという事が大きいだろう。勿論名前も拾ってもらった身なので死んで欲しいなんて微塵も思ってはいなかったが、畏怖の念を与える存在から解放されたのは正直ホッとした。そんなある日、珍しく銀時、高杉、桂の三人が揃って救護所へやって来た。

「だっ、大丈夫…!?」
「あぁ、今回なかなか手強い天人が多くて少々手子摺っただけだ」

軽傷かと思えば、三人とも結構な血を流している。名前は慌てて治療の準備を始めた。

「とにかく座って!小太郎から始めるから」
「…いや、俺からじゃなくて銀時から頼む。あやつが一番傷を負っている」
「っ…わ、わかった」

銀時の名を出され一瞬怯んだが、ここで拒む訳にもいかない。名前は目を合わせようとしない銀時に恐る恐る近付いて、手を伸ばした。

「…腕、みせて」
「……」

嫌がられるかと思ったが、大人しく腕を差し出してきた事に名前は少しだけ安堵した。しかし相変わらず銀時は視線を逸らしたままで、名前も無闇に話しかけることはしない。
あの日の夜、名前は銀時が折角自分のためを思ってやってくれたのに、酷い事を言って拒絶してしまった事を未だに悔やんでいた。銀時が怒るのも当たり前だと思っているし、名前自身合わせる顔が無い。そういう理由で今まで銀時と極力関わる事を避けていた…否、避けなければならないと思っていた事で、関係が拗れたまま随分と月日が経ってしまい、余計に顔を合わせ難くなってしまった。

「……」
「……」
「…空気が重ェ」
「そうだぞ、お前達いい加減にしたらどうだ。何があったか知らんが、そのままでいられるとこっちも気が滅入る」

桂と高杉の声に、名前は一瞬手を止めた。しかし何と返して良いか分からず、ひたすら無言を貫く。すると暫くして、頭上から大きな溜息が聞こえ、名前は驚いて体を縮こまらせた。溜息の犯人がわかっているからこそ、余計に怖い。名前は半ば無意識で「ごめんなさい」と言いかけたが、それは叶わなかった。強く腕を引かれ、外に連れ出されてしまったからだ。

「ぎん、とき…?」

あぁ、そういえば高杉にも同じように腕を引かれたなぁなどと頭の片隅で冷静に思える自分に驚きながら、名前は一生懸命銀時の足に付いて行った。

「やれやれ、手のかかる奴等だ」
「…そうだな」

残された二人はそう言ってお互いに苦笑し、仕方なく自分で怪我の手当てを始めた。


人気のない場所でようやく手を離した銀時。咄嗟に名前は俯いて、口を噤んだ。

「…こっちを見ろ」
「……ごめんなさい」
「そうじゃねぇ。お前がもう俺と口もききたくねぇと思ってるのはわかってる。だけど」
「ち、違う…!」
「何が違うっつーんだよ」
「私はただ…怖くて」
「ああ…俺が、だろ?わかってるって。もうお前には出来るだけ近付かねぇようにするから。でも最後に一言だけ、言っておきたくてな」
「ちが…違うの…これ以上銀時に嫌われてしまったらって思うと、怖くて、だから、」
「え…」
「…もう関わらないから、ごめんなさい、ごめんなさ…」
「名前!」

その場から駆け足で立ち去ろうとした名前を慌てて引き止めた。咄嗟に強く腕を引っ張ってしまったので勢い余って自分の腕の中に収まってしまったが構わずそのまま抱き締める。しかしその現状に慌てた名前が体を震わせ、逃げようとしている事に気が付き、銀時は徐に拘束していた腕を離した。

「…悪ィ」

一先ず体が離れたことに安心したようだが、また捕まえられては堪らないとでも言いたげな面持ちで、名前は大人しくその場にとどまった。

「…お前は、何か勘違いしてやがる」
「?」
「そして、俺も思い違いしてた事に今さっき気付かされた」
「…どういう」
「俺が、お前を嫌うはずねーだろ。嫌われるような事したのはこっちの方だっつーの。それなのにお前は俺の事嫌うどころか俺が怒ってるとか勘違いしてやがるしよ…」
「…違うの?」
「ちげーよ!酷ェ事したのは俺の方だ…すまねぇ」
「謝る必要ない…私の為にやってくれたのに、酷いことを言って拒絶した私の方が悪いんだから」
「ほら、そこを勘違いしてるって言ってんだよ」

未だに不思議そうな面持ちの名前に銀時はそっと手を伸ばし、怖がらせないように彼女の手を包み込んだ。

「お前は、俺を怒らせるような事は一切やってねぇ。現に、俺ァ怒っちゃいねーだろ。あん時は誰だってああなるっつーの。気にすんな」
「…銀時」
「つーか俺も安心したわ。このまま誤解がお互い解けないままだったら俺はきっと一生悔やんでただろうな」
「私が銀時を嫌うわけ無いじゃない」
「…あー…なんだ、言うのは良いが、言われると妙な気分だな…嬉しいけどよ」

約一ヶ月、ギクシャクしていただけあって余計になんだか照れ臭い。銀時はそんな気持ちを誤魔化すように視線を外して頬を掻いた。

「ねぇ、銀時」
「なんだ」
「ごめんね、ありがとう」

ようやく薄く笑みを浮かべた名前に、銀時も一気に肩の力が抜けた。この勢いのまま再び腕の中に閉じ込めてしまいそうになったが、脅えさせるのは目に見えているのでなんとか抑える。しかし、そんな努力は意味を成さず、銀時の心情を察してしまった名前は自分からそっと銀時の腕の中に収まった。

「…名前?」
「聞いたんでしょ、晋助から」
「……っ」
「気にしないでって言っても銀時は気にするだろうけど…私は大丈夫よ。きっと治る」
「…すまねぇ」
「大丈夫。自分から触れる分には問題ないみたいだから治療はこのまま続けられるし、今は自覚出来てる訳だから、どうにかなるわ」
「俺にできる事があったら何でも言ってくれ」
「ありがとう」

そう言って名前はゆっくり体を離した。銀時が高杉の口から名前が恐怖症になっていると聞いた時は酷く動揺して、「俺のせいだ」と自己嫌悪に陥った。しかし肝心な本人が恐怖症の事が発覚してからもなんとか克服しようと、日々少しずつ努力している。銀時もいつまでも逃げてばかりではいられないと、名前の目を見つめて力強く頷いた。

「戻ろう。手当てしないといけない隊士達が沢山いる」
「ああ」
「銀時もまだ途中だしね」
「俺は自分で出来るからもういいよ」
「ダメよ、肩と背中にも傷があるんでしょう」
「…よくわかったな」
「それが仕事だもの」
「頼もしい限りだなァ」

銀時と和解できたからというのもあるのか、名前に笑顔が戻って来た事を銀時は素直に嬉しく思った。これからずっと二人でいられるかどうかはわからないが、名前が自分にとって守りたいものである事には変わりないと、銀時はそう改めて思った。




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高杉が何故恐怖症の事を知っていたのかは、今後連載の方で書く予定でしたので、今回は省かせていただきました。ご了承ください。









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