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#03


「じゃーなー名字、気を付けて帰れよー」
「ありがとー水谷君も気を付けてー」
「急ぐぞ名前」
「あ、うん」
「あり?名前と阿部急いでどうしたんだ?」
「色々あってねー」

ミーティングが終わり、いつものようにみんなでコンビニに寄り道して帰ろうかとしていた時に、阿部達は藤岡の事を懸念して、先に学校を出ようとしていた。コンビニに寄っている時間すら惜しい。そんな二人の様子を不思議がる田島に、水谷が曖昧な返事をする。

「色々ってー?」
「えー…これって言っていいのかな?花井」
「…名字はあんま大事にして欲しくねぇみたいだぞ」
「そっかぁ、じゃあ言えないな」
「なんだよ秘密かよ!」
「ああ、秘密だ。ほら、皆帰るぞ!」

花井がさっさと話を打ち切り、田島ももうそれ以上は深く追求してこなかった。







「…いる?」
「今のところ居そうにはねぇが…ひょっこり出てくるとも限らねーからな」

自転車を押しながら、正門付近で辺りを見回す。名前も自分の携帯を確認してみたが、連絡は入っていなかった。二人はホッと胸を撫で下ろすと、そのまま正門から出た。すると。

「あ、名前ちゃん終わったの?」
「!?」

突然何処からか声が聞こえた。阿部も名前も悲鳴にも似た声をあげそうになったのを必死で抑え、声のした方を振り向いた。

「ふ、藤岡…先輩…」
「思ったより早くて助かったよ」

声の主は正門の前にしゃがみ込んでいた。どうりで先程見つからなかったわけだ。藤岡はその場から立ち上がり、地面に置いていた鞄を広い上げる。そして軽く砂を払うと、笑顔で当たり前のように名前の隣に並んだ。

「…あっ、隣が噂の彼氏君?」
「(噂…?)…どうも」
「俺、三年の藤岡」
「…阿部、です」
「知ってる知ってる。タカヤ君でしょ?よろしくねー」
「(よろしくって何だ…)…はい」

先程から心の中が顔に思い切り出ている。藤岡は気付いていないようだが、名前は阿部の気持ちが痛いほど伝わり、心配そうに横目で見ていた。

「んじゃ、帰ろうか」
「あの、帰ろうって…先輩…家の方向一緒なんですか?」
「ああ、いいのいいの。気にしないで。最後まで送って行くからさ」
「いえ…大丈夫です。隆也もいますし、それに…私達自転車なので」
「そっか…じゃあ…途中まで!それならいい?」
「それだったら…」
「よっしゃ」

名前が結局藤岡の勢いに押されて妥協してしまったが、その後に藤岡があまりにも嬉しそうに笑うものだから、怒る気も失せてしまった。本当にたちが悪い。計算でそれを行っているのならまだしも、おそらく彼は天然だ。それがわかるからこそ、阿部も名前も動きが取りにくかった。





学校を出てから十五分。その間ずっと藤岡は一方的に喋り続けていた。今日の体育のサッカーで自分は何点入れただとか、お昼に初めて食べてみた菓子パンが期待外れだったとか、新しいピアノの曲にチャレンジしようと思っているのだが、何かリクエストはないか、だとか。兎に角ずっと喋っている。よくもまぁ、こんなに話題が見つかるものだと、阿部だけでなく名前でさえも、驚き呆れていた。

「…藤岡…先輩」
「何?タカヤ君」
「……そこ駅ですけど?」
「あ、もう着いたのか。じゃあ、ここまでだな。名前ちゃんまた明日」
「…はい」
「タカヤ君もまたねー」
「…はい」

にっこりと笑って駅の中へ消えていった藤岡。たった十五分の間に、随分生気を奪われたような気がして、阿部と名前は深く息を吐いた。

「…疲れた」
「俺も」
「ごめんね隆也…」
「いやお前のせいじゃねーだろ。なんつーか…あの人って有無を言わせず行動してくる所あるよな」
「うん…それが一番困るのよ」

肩を竦めて、名前は自転車に跨った。阿部も自分の自転車に跨り、ペダルを漕ぎ始める。兎に角二人とも、早く家に帰りたかったのだ。

「なぁー名前ー」
「なーにー」

少し先を行っていた名前を後ろから呼び、阿部は二人の距離を縮めた。名前も一応速度を落とす。

「今日お前ん家泊まっていい?」
「いいけど、どうしたの?」
「…なんとなく」
「ふーん…?」

名前はいつもの事だからと、特に深く考える事もなく返事をした。

そうこうしているうち、あっという間に名前の自宅へたどり着いた。






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