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昼寝するにあたって必要なものは

とある日の昼下がり。

「名前ー名前ー」

俺はソファーに寝っ転がって、どこかにいるであろう名前を呼んだ。今は神楽も新八もいない。ついでに定春も。家に居るのは俺と名前の二人だけ、のはずなのに、何故か返事が一向に聞こえない。

「あれ、あいつも居ねーんだっけ?」

仕方なく、探してみる事にした。
と言ってもそんなに広い家じゃない。探す場所は限られているから案の定、探し人はすぐに見つかった。

「名前」
「んー、なに」
「何じゃねーよ、お前何してんの?」

自分の部屋の小さな机に向かって何やらカリカリゴソゴソやっている。後ろからヒョイと覗き込むと、名前は特に何かを隠す様子も見せず、手を止めた。

「仕事よ仕事。少しだけ溜まってたから片付けてたの」
「それが終わったら後暇か?」
「うん…特に何も無いけど、何かあるの?」
「いや、暇だから」
「…構えと」
「そう」
「……後でね」

そう言って名前はまた机に視線を戻した。一方俺は何をするかというと。これといってする事もないので、その辺に座って名前を観察する事にした。取りあえず、本当に暇なのだ。



観察すること約二十分。実を言うと、飽きてきた。
試しに何度かちょっかいを出してみたのだが、効果はなく。名前は黙々と仕事に励んでいた。

「なぁ名前ー」
「んー」
「俺寝る」
「ここで?」
「ったりめーだろ」
「…おやすみ」
「お、おお…」

思った以上にあっさり返答されたが、俺は取りあえず、その場所に横たわった。目を閉じて、眠りの世界へ誘(いざな)われるのを待つ。
するとそれから十分も経たないうちに、何やら名前がゴソゴソし始めた。うつらうつらしていた俺は、その音で意識が現実に戻ってくる。

「…銀時」

目を開けようとした途端、小さく名前を呼ばれた。そして徐々に俺へと近づいてくるのが気配で感じ取れた為、しばらく寝たふりを決め込むことにした。

「…寝ちゃったの?」
「……」
「ねぇ……銀時」

体を軽く揺すられるが、取りあえず気付かないフリを続ける。

「…坂田さーん…坂田銀時さーん…」
「………」
「銀時、銀、銀さん…銀ちゃん…」

ヤバい。そろそろ限界だ。腹の底から笑いがこみ上げてきて、今にも吹き出しそうだ。
おそらく、仕事が終わり、暇になった名前は後ろで眠る俺を見て、不意に寂しさのようなものを感じたのだろう。どうだ、さっきまで構ってもらいたかった俺の気持ちがわかったか。

「…私も寝よ」

遂に俺を起こすのを諦めたようだ。
薄目を開けると、俺に背を向けて窓から差し込む光を浴びるように、横になろうとしていた。俺は咄嗟に名前の腕を引き、俺の腕の中に閉じ込める。

「…う、わっ…いきなり何…っ」
「…俺の気持ちわかっただろ?」
「何が…って、やっぱり起きてたじゃないっ」
「細けェ事気にすんな」
「細かくないし」

抜け出そうとする名前を笑いながら腕で拘束し、俺は首元に顔を埋めた。途端にピクリと反応して若干大人しくなる。

「いー匂い。安心する」
「…くすぐったい」
「名前」
「んっ…何…」
「一緒に寝よーぜ」
「このまま?」
「おう」

もうすっかり反抗する気も失せたのか、大人しくなった名前は、俺の言葉に顔を上げた。

「…じゃあせめて、向かい合わせになってもいい?」
「ああ、いいぜ」

腕の力を緩めると、名前はスルリと回転して俺の胸元におでこを付けた。それを見て、無性に襲いたくなった訳だが、なんとか自分を抑えつけて強く名前を抱き締めるだけに留めることが出来た。我ながら偉い。

「やっぱこの抱き枕じゃねーと安眠できねー」
「嘘ばっかり。それに私抱き枕じゃないわよ」
「嘘じゃねぇよ。男はなァ、こうやって誰かを抱きながら寝たい時があんだよ」
「じゃあ新八君にお願いしたら」
「バカかオメーは。男なんて硬ェだけだし臭ェし暑苦しいしで三重苦…いやもっとあるかもしんねぇな…とにかく、考えただけで吐き気してくるわ」
「そう?私は安心するけど」
「だから男女がお互いにとっていいんだろ。まぁ、どう思うかは人それぞれだけど」
「…銀時は甘い匂いがするね」

不意にスン…と首元に鼻を寄せられた。そんな名前の姿に、俺は頬が緩むのを感じて慌てて引き締める。

「俺ァ糖分王だからな」
「糖尿病予備軍がよく言う」
「いーんだよ。俺は短く太く生きるって決めたんだ」
「ふーん」

名前はまた俺の腕の中にすっぽりと収まり、目を閉じた。いよいよ寝る態勢に入ったか。

「おやすみ、銀時」
「おー」

そうして俺達は、誰もいない静かな場所で、暫くの間眠りについた。


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