サクラちゃんが風邪を引いたようです



 今日の待ち合わせは、里の門の近くの、大きな木の下。
 集合時間ぴったりに、サクラはその木の近くに着いた。サスケは、既に木の下にいた。

 だが、サクラはサスケに気づいていないようで、ため息をつきながら木にもたれかかる。少し顔色が悪いようにも見える。
 サスケは、サクラの様子に違和感を感じた。仮に、何か悩みを持っていたとしても、自分に気づかないことは絶対にない。サスケが返事をするまでしつこく挨拶するくらいだ。
 サスケがじーっとサクラのことを見つめていても、彼女はまったく気づかない。
「……サクラ!」
「っ……」
 大声で呼ぶ。ようやく気づいたようだ。

「あ、あれ? サスケくん、いたの……?」
 瞳が潤んでいる。だが、泣きそうな顔というわけではない。サスケの違和感は、ますます大きくなる。

 サクラは、疲れたような笑顔を浮かべながら、「おはよう」と消えてしまいそうな小さな声で言う。サスケも「……はよ」と短く返事をするが、頭の中では違和感が何か、という模索が続いている。
 集合時間から十分後。ナルトがようやく到着した。
「ウスラトンカチ。十分遅刻だ」
 二人の姿を見たナルトは、慌てて駆け寄る。
「カップラーメンつくんのに、三回も失敗しちまったってばよー」
 どうしたらカップラーメンを失敗できるのかわからないが――とにかく、遅刻は遅刻。そんなことよりも、やはりサスケは、サクラのことが気がかりだった。ナルトが遅刻をしたら、激怒するサクラが今日は怒らない。それどころか、おはようすら言わない。

「サクラちゃん、おはよー」
 数秒の間。
「え? あ……。おはよ」
 慌てて笑顔を作り、返事をした。ナルトは、違和感には気づいていないらしく、いつも通りにサクラの隣に座った。

 サスケは、ようやくサクラの異変の原因に気づいた。
 サクラの額に手を当てると、かなり熱があった。
「サスケェッ! 何でサクラちゃんの額にふれるんだってばよ!? ……も、もしかして、サスケもサクラちゃんのこと……!」
「バカッ、ちげぇよウスラトンカチ、ドベナルト!」
 サクラの容態はますます悪化しているように見える。現に、サスケとナルトが言い争いをしても、間に入ろうとしない。いつもだったら、止めに入るのが彼女の役目だ。
 サスケは、心配そうにサクラの顔を覗き込む。

「サクラ、今日は帰れ」
 その言葉を聞き、ナルトはようやく理解した。サクラが風邪で苦しんでいるということを。そして、サスケが気づいて、自分が気づけなかったというもどかしさに顔を顰める。
 一方、サクラは無言で首を横に振る。
「帰れ」
 やはり、サクラは首を横に振る。
「足手まといになる。帰れ」
 ただ、無言で首を横に振る。

 サスケがため息をつくと、サクラがようやく口を開いた。
「カカシ先生……今日の任務は、三人揃わないとできないからって言ってたから……だから……」
 サクラの優しい言葉を聞いたナルトは、サクラの顔を覗き込みながら、
「それは、俺の影分身で何とかするから、だいじょうぶだったばよ!」
 と、笑いながら言った。

 サクラはしばらく考え込み、やはり足手まといになると考えたのか、ふらふらと立ち上がった。無事に家につけそうな歩き方ではない。サスケもナルトもそう思ったと同時に、サクラが倒れそうになる。
 二人は慌てて駆け出し、ほぼ同時にサクラの身体を支える。
「あり、がとう……」
 つらそうに笑顔を浮かべるサクラ。だが、その顔は本当に嬉しそうだった。
 結局、サクラは二人で送ることになった。















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