fill the vacuum(1/4)


「そこで、実働班が……」


戦術のことについて語る亮一さんは生き生きしている。

俺自身も、亮一さんの話を聞くのは大好きだ。


だけど、

亮一さんにとって、俺って何なんだ――…?


「か…明日叶?」

「えっ…あっ……」

「ごめん。疲れちゃったかな?俺の話ばっかり聞いてて……」

「ちっ、違います……!」


――訊けない。

『亮一さんにとって、俺って何なんですか?』

そんな、独りよがりなこと。


「少し、長く話しすぎちゃったね。寮に戻ろうか?」

「……はい。」


――言えるわけがない。


机上の資料を片付けていると

不意に重なる、2人の手。


「あっ……」


離したく、ない。

ここで離したら、もう機会がない。

何となく、そんな気がして。


下に重なった亮一さんの手を、そっと握る。


「明日叶?」

「亮一さん…俺、亮一さんのこと――」


その先を言おうとした瞬間、

人差し指を立てた亮一さんに制止させられる。


「亮一さん……?」

「ごめん。俺が言うから。」




次へ

戻る

×
- ナノ -