fill the vacuum(2/4)


お互い、自然に重なった手を引っ込める。

亮一さんは軽く咳払いをして、真剣な顔で俺を見てきて――…


「明日叶。」

「はい。」

「今まで、ずっとうやむやにしてきたんだけど……」

「はい……」


場の雰囲気が、重い。

自然と、視線が下を向く。

亮一さんの次の言葉を待つも、なかなか発しようとしない。


「亮一さんは、面倒見が凄くいいから……」

「明日叶……?」

「きっと、弟の面倒を見る感覚で接してくれてたのに…俺、亮一さんのパートナーになりたいって…勘違い、して……」

「違う!」


今まで聞いたことのない大きな声。

驚きのあまり、亮一さんを凝視してしまう。


「亮一、さん……?」

「俺は、これからもずっと、明日叶のパートナーでいたいと思ってる。」

「それってどういう意味ですか…?俺、バカだから…勘違いします……」


そう言うと、亮一さんは俺の手を引き、触れるだけのキスをする。

ただ、触れるだけだったけど

ひどく、優しい――…。


「こういう意味だよ」


そう言った亮一さんの目も、

ひどく優しかった。




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