※10万フリリク企画
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早乙女学園を卒業して早数ヶ月。
寮の部屋が隣同士ということで、ハルと俺は互いの部屋を行き来する機会が自然と多くなった。
今日はハルが夕食を作って部屋で待っているとのこと。
仕事が終わっても自分の部屋には戻らず、直接ハルの部屋の呼び鈴を鳴らした。
――チリンチリン。
呼び鈴を鳴らすと、「はーい」という声とともに玄関のドアが開く。
「あっ、真斗くん!おかえりなさい!」
「あっ、ああ。今帰った」
まともに顔が見れない。
今まで普通の言葉だと思っていた「おかえり」や「ただいま」。
それをこうやって好きに人に対して面と向かって言うのは、慣れない今は案外恥ずかしい。
「ご飯できてます!…食べましょう?」
ハルも恥ずかしかったのか、頬を赤らめながら笑顔で俺のほうを見た。
――2人きりの食卓。
他愛のない会話。
彼女の笑顔を見るたび、俺の顔も自然と綻ぶ。
「あっ、真斗くん。今日はもうお仕事終わりですよね?」
「ああ。今日はもう終わりだ」
「じゃあ…ずっと一緒にいれますね!」
――"ずっと一緒"…?
それは、『今このときをずっと一緒にいれる』ということか、
それとも『朝までずっと一緒にいれる』ということか、どちらに取ればいいのか判らない。
好きだから大事にしたいと思うのに、常に頭の中で駆け巡るのは、矛盾甚だしい滑稽な妄想ばかり。
*
――夕食後。
2人でソファに腰掛ける。
リモコンに手を伸ばし、テレビをつけると、ソングステーションが放映されていた。
しかも、歌っているのは、シャイニング事務所の先輩。食い入るようにその画面を見る、ハル。
「…真斗くん」
「何だ…?」
「わたし、真斗くんには絶対この舞台で歌ってほしい…。だから――…」
そう言うと、きゅっと俺の服のすそを掴んで、
「頑張りましょう。絶対」
そう真剣に俺を見る、目。
「ああ。2人で頑張ろう」
そう言って、隣に座っているハルを優しく抱き寄せた。
潤んだ彼女の瞳に一瞬意識がたじろくが、一呼吸置いて、自分を落ち着かせる。
――今はまだ、触れるべきときじゃない。
いつまでこの理性がもつのだろうか、なんて考えながら、そう思うのであった。
せいいっぱいの純情
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*あとがき*
10万ヒット企画第7弾!
聖川さんが気持ち悪くならないようにならないようにと気をつけながら書きました…!
リクエストありがとうございました!
これからもよろしくお願いします^^*
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