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ほしいのは心だけ



※10万フリリク企画



――2月13日、夜。

神宮寺さんの誕生日は2月14日。
バレンタインデーだから、誕生日プレゼントはチョコレートなんて安直すぎるって考えてたらもう前日になっていて。

みんなが思いつくようなプレゼントは嫌だ。特別なものがいい。
そんな風に考えているから、なかなか思いつかなくて。

――どうしよう……。

そう思っていると、不意に鳴る携帯電話のメール着信音。
ディスプレイに映し出されるのは、もちろん、神宮寺さんの名前――…。

『今から会えないかな?』

そう書いてあるメールを見て、心が躍る。
神宮寺さんに会いたくて、わたしはすぐに返信した。

『わたしも会いたいです』

そうメールを送るとすぐに、わたしの部屋の呼び鈴が鳴る。
もちろん、その相手は神宮寺さん。

部屋のドアを開けると同時に抱きしめられる。痛いくらいに。
神宮寺さんのお仕事が忙しくて、最近はまともに会えなかったから。
久々の神宮寺さんの体温が心地よくて、わたしは身体を預けた。

「…お久しぶりです。神宮寺さん……」
「会いたかったよ、ハニー」
「あっ、はい…。ダっダ…ダーリン……」
「照れちゃって本当に可愛いね…キミは」

そんな挨拶もそこそこにして、部屋の中に入ってもらった。
2人でソファに座り、他愛のない会話をする。お仕事のこと。曲のこと。2人のこと。

ふと、時計を見ると、もうすぐ夜の12時になろうとしていて。
日付が変わって、神宮寺さんの誕生日がくる――…。
そんな、時計を気にするわたしを、神宮寺さんは不思議そうに見て、

「……?どうかしたのかい?」
「あっ…いえっ、あの……」

そう言葉を濁して、ちらっと時計を見ると、
――12時。
ソファから立ちあがって、

「じっ、神宮寺さん…!お誕生日おめでとうございます!」

そう言うと、神宮寺さんは少し驚いたようにわたしを見る。
でも、その目は凄く優しくて、見てるだけで安心する。そんな感じだった。

「…いいものだね。好きな人から最初にお祝いの言葉を言われるのは」
「あっ、でも…わたし、誕生日プレゼントを用意してなくて……」
「プレゼントなんていいよ。キミがいま、隣にいてくれるだけでいいんだ」
「そっそれじゃダメです…!あっ!じゃあ、わたしに何か出来ることありませんか?なんでもします!」

そう言うと、神宮寺さんは何かを考えているようで…。
――誕生日なんだから、神宮寺さんの喜ぶことがしたい。わたしじゃ出来ることは限られるけど。

「……決めたよ」
「本当ですか?何ですか!?」
「春歌がほしい」
「え…?」
「だから…キミが欲しい」

その言葉とともに、髪をそっと撫でられる。
反射的に目を瞑ると、重なる唇。
離れたと思ったら、その唇は首筋へと移動していく。

「……神宮寺さん。わたしなんかじゃ誕生日プレゼントになりませんよ……?」
「いや、キミは最高の誕生日プレゼントだよ」

そうしてわたしたちは、ソファになだれ込んだ。



部屋の電気を消してくれない神宮寺さん。
わたしが恥ずかしげにしているのを見ると、満足気なようだった。

「…っ…神宮寺、さん……」
「なんだい?ハニー」
「は、恥ずかしいです…。電気、消しましょう……?」
「だめだよ。そんなことより、もっと顔を良く見せて……」

明るい部屋で身体を重なるのは恥ずかしくて、目線をどこに置けばいいのかさえ判らない。
すると、神宮寺さんはわたしの額に口づけを落として、

「春歌…オレを見て……」
「は、はい…ぁ……」

近いから良く判る。神宮寺さんの瞳に、わたしが映っているのが。
わたしの瞳にも、神宮寺さんが映ってるのかな……?

今まで人とこんなに近くで見つめ合ったことがない。
好きな人とだから、こんなにもドキドキするんだ……。

「…神宮寺さんっ…好き、です……」

そう言って、いつもしてくれているように、神宮寺さんの首筋にそっとキスをした。
すると、小さな溜め息が聞こえてきて。

「…っ……?神宮寺さん……?」
「無意識って言うのが一番怖いね…。キミが可愛すぎて止められそうにない。悪いけど、今日は付き合ってもらうよ」
「え…?きゃっ…!…んっ、ぁ……」

その言葉通り、明け方になるまで神宮寺さんはわたしを離してはくれなかった。
だけど、好きだからこそ求められる。それはすごく嬉しいことだと思えた。

来年も再来年もずっと神宮寺さんと一緒にいたい。
そしてまた、このときを神宮寺さんと一緒に過ごしたい。そんなことを思いながら、わたしはそっと神宮寺さんの腕の中で目を閉じた。


ほしいのは心だけ
(物じゃなくて、言葉でもなくて、ほしいのは、心)

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*あとがき*
10万hit第5弾!
この間、レンの誕生日だったということで少し遅くなりましたが誕生日のお話にさせていただきました^^*
ラブラブな2人は書いてて本当に楽しかったです!!

リクエストありがとうございました!
これからも、よろしくお願いします^^*

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