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終わりを、ください



※真斗→主人公→レン
報われない聖川さんにつきご注意を



「神宮寺さんが…好きなんです……」

見てしまった。密かに想っている彼女の告白の現場を。
しかもよりによって相手は神宮寺――…。

「ごめんね、レディ。レディが大人の恋を知るその時まで、この返事は保留にしておいていいかい?」

そう言いながら軽く手をあげて、ハルの前を去る神宮寺。
神宮寺が断ってくれて、安堵の溜め息をついている自分がいる。
だって、アイツなんかに彼女を渡したくはないから。

神宮寺が完全に見えなくなったところで、後ろから彼女に声をかける。
少しでも、話したくて。

「ハル……」
「……!!真斗くん…!?…まさか、今の……」
「ああ、偶然通りかかってな…。すまない、立ち聞きするつもりはなかったんだが……」

改めて彼女の方を見ると、泣くのを堪えている。そんな感じだった。

慰めたくて
でも、どうすればいいか判らなくて
だったら、弱いところにつけこむしかない。そう思った。

――二番目でもいいから

「…神宮寺は『大人の恋』と言っていたな」
「あっ…はい。わたし、もともと恋なんてしたことがなかったのに、『大人の恋』なんて…。…もっと判らなくて…」
「…俺なら教えてあげられるかもしれない」

そう彼女の目を見て、真っ直ぐに言う。

――俺だって『大人の恋』なんて知らない。
だけど、このチャンスを逃したら、この先、彼女に近づけることはないかもしれない。
そう思ったら、口が勝手に動いていた。

「あっ、あの…!真斗くん…『大人の恋』…教えて、ください……」

少しでも、傍にいたいが為の嘘。



「っ、はぁ…やっ…、…っん……」

――『大人の恋』
そんなもの知らないから、大人がしていることをすればいい。
そんな、短絡的思考に行き着いた。

あの日から今まで、何度も肌を重ねた俺たち。
こんなこと、何の意味も持たないのに、彼女の傍にいれるだけで嬉しいと思ってしまう。

最初は全然上手くいかなかったが、回数を重ねればだんだん勝手が解ってくる。
どこが弱いかとか、どうすれば悦くなるとか。

「っ、はぁ…っ…」
「お前は、ここが弱いな…」

そう言って、陰核をつまみ、軽く擦る。
面白いくらいに、小さく震える身体。

「凄く濡れている…。早く入れて欲しいか…?」

そう訊くと、小さく頷くハル。

こんなに欲しがっているのに、何でお前が想ってるのは…神宮寺なんだ…?
俺には、何が足りないんだ――…?

「入れるぞ……」

彼女の片足を持ち上げ、中へ一気に入っていく。
狭い上に締め付けられる、この感じがたまらない。

じっとしているなんて無理で、自然と動く、身体。
聞こえてくる矯声が、更に俺を煽る。

「っ、はぁ…あぁ…っんぁ、っ……」
「ハル、っ…ハル……」
「っ、あぁ…、んんっ、やぁ……」

気づいたことがある。
ハルは俺の名を読んでくれない。
ハルは俺の目を、見てくれない。

「ハル…っ、ハル…」

返してくれない、名前。
見てくれない、目。

きっと、彼女が目を瞑って想像してるのは、神宮寺。
ここで俺の名を呼んだら、彼女は目の前にいるのが神宮寺ではなく俺だと認識する他ない。

「はぁ…、ん…激しっ…あぁ、…っん……!」

動く度に立つ、激しい水音。
肌と肌が、ぶつかる音。

快感だけに従って、今は神宮寺のことなんて忘れていてほしい。
だって今、目の前にいるのは俺のなんだから。

「すまない…っ、ハル…イく…っ……」

彼女の片足を肩にかけ、更に繋がりを激しく揺さぶる。
彼女の中が収縮したと思った瞬間、避妊具の中に全てを出した。

重なる2人の荒い息。
離れがたくとも離れなければならない、この現実。



「真斗くん…わたし、大人になれてるんでしょうか…?」

そう疑問を投げ掛ける彼女。
また俺は小さな嘘をつく。

「きっと、少しずつ…大人になっているんじゃないか…?」
「そう、ですよね。…変なこと言ってしまってすみません」

重なっていく、嘘。
もう戻れない、関係。

そっと彼女の身体を抱きしめる。
この嘘で、いつまで彼女の傍にいれることが出来るのだろうか、なんて思いながら。


終わりを、ください
(早くあきらめたいから)

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