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秘密の恋がバレたら



※多分トキヤと主人公は成人済み



「バレたらどうしますか?」

真っ直ぐな目でわたしを見てきた一ノ瀬さん。
話の脈絡がなかったために、聞き返す。

「バレるって、何がですか?」
「…私たちが付き合っているという事実です」

ドキンと、心臓の鼓動が速くなる。だってそれはバレてはいけないことだから。

早乙女学園卒業後、一ノ瀬さんは多大なる人気を得て、今では日本を代表するトップアイドルとまでなった。
そんな一ノ瀬さんにスキャンダルなんて絶対ご法度。

「…もしバレたら…どうしましょう…」

返す言葉がなかった。
もしバレたとしても、わたしは一ノ瀬さんが本当に好きだから、別れるなんてしたくない。

――だけど、一ノ瀬さんは…?
もしかしたら別れるつもりなんだろうか…?

わたしは絶対嫌だけど、一ノ瀬さんのためにはそれが一番いいかもしれない。
本当は嫌、だけど。


「あっ、あの…もしバレたら…別れ…ますか……?」
「はあ…?」

眉間にシワをよせて、わたしを見る一ノ瀬さん。
それは、まるで怒っているかのように。

「春歌…。君は私と別れたいんですか?」
「ちっ、違います…!でも、一ノ瀬さんのことを考えたら…それが…一番なんじゃないかって……」
「…悪いですが、私はあなたを手放すつもりはありません」

そんな恥ずかしいことを一ノ瀬さんは全く照れずに、真っ直ぐに目を見て言ってきて。
恥ずかしさから真っ赤になっていく、わたしの顔。

「あっ、あの…一ノ瀬さん……」
「…前から言おうと思っていたんですが、その『一ノ瀬さん』と言うの、やめていただけませんか?」
「えっ……」

――不安になる。
さっきから一ノ瀬さんがおかしくて、どうしていいか判らない。

「あっ、あの…ごめん、なさい…」

ハァ…、と一ノ瀬さんは小さく溜め息をつくと、わたしの左手をとる。
すると、ポケットから何かを取り出して、わたしの薬指にはめた。

「一ノ瀬さん…これって……」

――指輪…?

「あなたはこれから名字が『一ノ瀬』になるんですよ。なのに私を『一ノ瀬さん』と呼ぶのはおかしいと思いませんか?」
「えっ…あのっ…」
「これからは、名前で呼んでいただかないと」

混乱してしまう。
だって、さっきまで一ノ瀬さんは怒ってるものだと思っていたから。

「あっ、あの……」
「『トキヤ』。…呼んでみてください」
「…トキヤ、くん」

何年間も名字で呼び続けていたのに、いきなり名前で呼ぶのはとても恥ずかしくて。名前を呼ぶ声がいつもよりも小さくなってしまった。
だけど、一ノ瀬さんは満足げな顔で。

「七海春歌さん。…もし私との関係がバレたら、そのときは結婚してください」
「えっ…あっ…あのっ……」

頭がすごく混乱して、なんて返事をしていいか判らない。
『はい』って言えばいいのに、口から何も言葉が出てこなくて。

その代わりに、大きく頷いた。だって嬉しかったから。
すると、一ノ瀬さんは優しい顔でわたしの方を見る。

「…良かった。これからも、ずっと私の傍にいてください」

そう言って、私を包み込むように抱きしめる一ノ瀬さん。
もし関係がバレたとしても、ずっと一緒にいれるという安心感から、わたしは一ノ瀬さんに身体を預けた。

――バレるのも悪くないかも。
なんて、いけないことを思いながら。


秘密の恋がバレたら
(そのときは、結婚してください)

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ちょっと前に日記で書いた妄想を文章にしてみた
トキヤはバレたら潔く結婚しそう

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