答えはもちろんイエスかハイ



気になる。気になる。

どうしても気になる。

最初はただの"暇潰し"のはずだった。


おれは慧をたてなきゃいけないし、いつも中途半端に手ぇ抜かなきゃいけないし……

退屈で仕方がなかった毎日。

ダイヤモンドサインも段々飽きてきた。


そんな時だっけ?

真奈美せんせいと遊ぶようになったのは――…。


「…ち!那智!!」

「えっ?何?兄さん……」

「"何?"ではない!会議中だぞ!ボーッとしているとは何事だ!!」

「あっ、ゴメン。続けて続けて〜。」


――"ボーッと"ねぇ。

おれ、そんなにボーッとしてた?

ただ、あのアホ女のこと考えてただけなんだけど。


最近少しだけおかしい気がする。

だって、常に頭の片隅には真奈美せんせいがいる――。

消えろ、と思っても増えてく一方で……。


今何してるんだろ?とか

誰と話してるんだろ?とか

……そんなことばっか考えて。


マジ意味わかんねー。








「はろ〜、真奈美せんせい。」


後ろから声を掛けると、ビクッと反応する肩。

ほら、これだから面白いんだよ。せんせいって。


「なっ…那智君……。」


せんせいが腕に抱えている、出席簿やら授業教材やらの中から明らかに不釣り合いな紙切れが見える。


「ねぇ、真奈美せんせい。その紙って映画のチケット〜?」

「えっ…あっ……!」


そう言って、せんせいはそれを必死に隠そうとするけど……

――バカ。

隠そうとしたって、遅いっつの。


「せんせい、誰から貰ったの?それ。」

「天童先生…から……」


――天童、ねぇ。

あんな変な奴からチケットなんて貰ってんじゃねぇよ、アホ。


何でおれ、こんなにイライラしてるんだろ?

……気になるんだよ。

せんせいのこと――…。


そっと腕の中からチケットを引き抜き、せんせいの面前でビリビリに破く。


「なっ…那智君……!!」

「……せんせい。おれ、おかしいんだよ。」

「えっ……?」

「何でか知らないけどさ、気が付けば真奈美せんせいのことばっか考えてんの。」

「那智君……?」


――何か久々に見た。

恐怖に歪んでない、せんせいの顔――…。


「……ねぇ、せんせい。これってさ、"好き"ってことなのかな〜?」

「好き……?」

「うん。……せんせいは、おれのこと…好き……?」

「………私は…」


答えを言おうとする真奈美せんせいの口を、自分のそれでそっと塞ぐ。

思えば、おれ達の関係が始まってから、こんな風に優しいキスをするのは初めてかもしれない――…。


何だか愛しくなって、せんせいをギュっと抱きしめる。

そして、耳元に口を近づけて一言。







「せんせい。答えは勿論"イエス"か"ハイ"だよね?」







戻る

×
- ナノ -