絶対王政という恐怖政治



那智君に無理やりされてから、もう1週間が経とうとしている。

言えるわけないよ……

那智君に、あんなことされたなんて――…。


「ティンカーちゃ〜ん!」

「あっ!先生だぁ〜!!」

「嶺君、多智花君……おはよう。」


後ろから声を掛けられる度に、心臓の鼓動が速くなる――…。

もし、那智君だったらどうしよう……とか。

私、那智君が怖いんだ――…。


声を掛けてくれたのが、嶺君と多智花君で良かった……。


「ちょちょっと!ティンカーちゃん、MKW!マジで 顔色 悪い」

「ホントだ〜!先生、具合悪いナリか?」

「大丈夫、大丈夫よ……。」


言えるわけがない。

那智君のこと考えて、気分が悪くなっちゃった……なんて。


「真奈美せ〜んせい、おはよ〜!」


後ろから聞こえてくる声。

この声………

いやだ、振り返りたくない

振り返れるわけがない――…


「おはよ、アホども〜!ちょっと真奈美せんせい借りてくね〜。」


そう言って、那智君は私の腕を掴む。

瞬間的に、私はその腕を払いのけてしまった。


すると、鈍い舌打ちが聞こえてくる。


「ねぇ、真奈美せんせい。昨日の授業で分かんないとこ、あったんだ〜。教えてくれるよね?」


そう言って那智君は私に向かって微笑む。

その微笑みは、いつも皆に向けてるそれとは、まるで違う。

私は黙って頷くしかなかった。












連れてこられた場所は空き教室。

嫌な思い出しかないのに――…

早く、早くここから出たい……


「あっ、そうだ〜!おれ、せんせいにいいもの聞かせてあげるね〜。」

「いいもの……?」

「うん!」


すると、那智君は携帯電話を取りだし、ボタンを押し出す。

そして、スピーカー部分を私の方に向けてきて……



『…ッ…ぁあ…那智君…んぁッ……!』



空き教室に響く、携帯電話から流れる矯声。

その声の主は間違えなく、私。


「なっ…那智君……!!」

「おれだけ真奈美せんせいに弱み握られてるなんて微妙だからね〜。」

「弱み……!?那智君が勝手にバラしたんでしょ!?」

「そうだっけ〜?まぁ、これでおあいこだね。」


そう言って那智君は再び笑みを浮かべる。

そう、黒い微笑みを――…。


きっともう彼からは

逃れられないんだ――…。





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