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若王子貴文のお仕置き。(1/6)
羽ヶ崎学園のプリンスこと佐伯瑛は、放課後化学準備室に来るよう、教師である若王子貴文に言われていた。
どうして、呼び出されたかは瑛自身良く解っている。
店の手伝いだ。
ただの店の手伝いなら、ここまで言われない。
しかし、喫茶珊瑚礁は夜遅くまで営業しているし、酒だって出す。
いくら経営者が祖父であったとしても、高校生が働くような場ではない。
憂鬱な気分で、瑛は化学準備室へと続く廊下を歩いて行く。
足取りは……重い。
どうせ、辞めろと言われるに決まっている。
どうして、あの日曜日、若王子と偶然会ってしまったのか……
後悔の念に苛まれる。
しかし、辞めろと言われても、辞める気は毛頭ない。
考え込んでいるうちに、化学準備室に着いてしまった。
大きく深呼吸をし、瑛は扉を叩く。
「失礼します。」
「佐伯くんですか?どうぞ。」
化学準備室に入ると椅子が用意され、瑛は若王子に座るよう促された。
「今日は先生、佐伯くんとお話がしたかったんです。」
「わかってます。バイトのことですよね?」
「ピンポンです。」
「先生…オレ、あの店絶対辞めませんから…。」
「でも、佐伯くん……」
「お願いします!若王子先生!オレ何でもします!だから、黙ってて下さい!」
その言葉に若王子は反応する。
「何でも…するんですか?」
「黙っててくれるなら!」
瑛は勢い良く言い切った。
この後、何をされるかも知らずに――…
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