gお題 | ナノ
移り香
今日は珊瑚礁の定休日。
まっすぐ家に帰りたくなくて、学校が閉まるまで図書館で勉強。
だけど、これが間違いだった。
「あっ、瑛くん!」
「瑠宇…と、志波……」
――見たくない。
こんな、ツーショット。
認めたく、ない。
「あっ、志波くん。方向一緒だから瑛くんに送ってもらうね!」
「ああ。佐伯、頼む。」
「えっ…?何がだよ?」
「遅くなっちゃったから志波くんが送ってくれるって言ってくれたんだけど、志波くんの家と私の家、方向逆だからさ〜。」
――ああ、この最強の天然。
時間が遅いから、なんてただの口実。
本当はお前と一緒にいることが目的だろうに。
「じゃあね、志波くん!」
「ああ。また明日。」
――認めたく、ない。
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「でねっ、瑛くん!」
「あー、ハイハイ。」
さっきから
隣からほのかに香る、制汗スプレーの香り。
「なんかお前、スプレーのいい匂いする……」
「えっ!?あっ…えっと…ホント……!?」
何だよ、この動揺。
もしかして――…。
「志波の……」
「えっ!?しっしっ志波くんが何か!?」
――ビンゴ。
この香りは、部活終わりの志波のスプレーの香り。
匂いが移るって、何してたんだよ――…
絶対に聞いてはいけない気がした。
だから
「バーカ。」
そう言って、瑠宇にチョップ。
「あー!バカって言うほうがバカなんだよ!」
そう言って、ふざけ合う。
だってそうしないともう
やっていけない気がしたから――…。
To be continued...
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